
最低賃金1075円時代。それでも応募・採用を増やす!
北海道の最低賃金は年々上昇しており、2025年10月4日からは1,075円となりました。これは、10年前(2015年度)の764円から約40%もの大幅な引き上げです。
人件費と物価の高騰が経営を圧迫する中、高齢化による人手不足は加速し、「給与を上げて採用したいが、これ以上は厳しい…」とパート・アルバイトの採用活動に苦労している担当者も多いはずです。
そこで、今回の記事では最低賃金でも求人広告の内容を改善し、賃金面だけでない価値を見出すことで、応募増加や採用成功につながった事例を、求人広告に役立つポイントと共にご紹介します。
もちろん高い給与は大きな魅力ですが、求職者にとって、「職場の人間関係」「休みの取りやすさ」「仕事の負担度」「通いやすさ」といった非金銭的な要素が、応募を決める重要な決め手となります。
求職者の不安を取り除くための情報開示と環境改善こそが、採用の鍵となります。すぐに確認できるチェックリストも公開しますので、ぜひ今後の採用活動の参考にしてみてください。
目次
【事例集】給与以外の「価値」を見つけるポイント
ヒトキタを運営する北海道アルバイト情報社の求人メディアの中で、求人内容を改善し、応募増加につながったパート・アルバイトの成功事例から、具体的なポイントを3つに分けて分析し、ご紹介します。
1.不安を解消!働く環境を具体的に示し「安心感」をアピールした事例
求職者は、給与だけでなく「長く安心して働けるか」「自分に務まる仕事か」という点を重視しています。特に時間に制約のあるターゲット層は、労働条件の柔軟性や職場の雰囲気に敏感です。
| 募集職種 / 業界 (掲載メディア) |
改善したポイント |
採用に至った反応 |
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<札幌市> ベッドメイク・客室清掃 /清掃 (アルキタ) |
・スタッフインタビューをメインにした原稿に変更。 ・「取材スタッフより」のコメントを追加。 ・働くスタッフ・採用担当者の雰囲気や働き方をリアルに表現。 |
応募が以前の2倍に増加。「職場の雰囲気が良さそうだと思って応募した」という応募者が多数。 |
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<旭川市> お惣菜の計量・盛り付け / 食品製造工場 (シゴトガイド、 しゅふきた、Indeedなど) |
・職種名を具体化。 ・実際の作業風景を写真掲載。 ・工場の清潔さを明記。 ・無料送迎バスの有無と運行ルートを具体的に記載。 ・カップラーメンプレゼント、制服は会社で洗濯可能、珍しい自動販売機の設置など、求職者に響くユニークな要素を記載。 |
他社掲載時0〜1件から、7件応募(30~40代が中心)。3名採用確定。 |
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<東川町> 児童指導員 / 児童福祉施設 (シゴトガイド、 Indeed) |
・施設の理念を具体的に表現。 ・外観とスタッフ写真を追加。 ・在籍スタッフの詳細な人数を明記。 ・無資格未経験OKに変更。 ・有給が使いやすい環境であることを明記。 |
ハローワークで応募0人から2名応募あり。30歳女性の採用に成功。 |
【成功のポイント】
- 職場の雰囲気や具体的な年代層を見せる: 職場の外観、スタッフの様子や年齢層などを写真や具体的な数値で示すと、その職場で働く自分のイメージがしやすく、応募前の不安を取り除けます。
- 通いやすさについて:送迎バスのルートを記入、車通勤の可否、駐車場代、交通費の支給額など、具体的な通勤イメージがしやすい情報を入れると、求職者は通勤手段を想定しやすくなります。
- メリットの強調: 制服の洗濯代行、ユニークな福利厚生といった「お得感」を具体的に記載することで、その職場で働く「メリット」をアピールできます。従業員割引や賄い(昼食代)なども良いPRになります。
- 企業理念や担当者の想いを伝える:「従業員を大切にする会社である」というメッセージを伝えることが、応募意欲を大きく高める要因となります。想いだけでなく、具体的な事例(有給は100%消化、急な休みにも対応しているなど)をセットでアピールすると効果的です。
2.ライフスタイルに合わせた「柔軟な働き方とメッセージング」で応募のハードルを下げた事例
主婦(夫)層など、特定のターゲット層に響くよう、条件の柔軟性を明確に伝える工夫が成功につながっています。
| 募集職種 / 業界 (掲載メディア) |
改善したポイント | 採用に至った反応 | |
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<札幌市> 大学食堂内の調理補助 / 食堂 (しゅふきた)
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・固定シフトから自由選択シフトへ、時間の記載を変更。 ・「勤務は週3日〜」を「週2日〜」にハードルを下げて記載。 ・髪型・髪色自由、友達と応募OKを記載。 |
0名が長く続いた状況から、5名のWeb応募+電話数件あり、採用決定。 | |
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<旭川市> 日祝休みの一般事務 |
・お子さんの体調不良に伴う急なお休みにも対応できることを明記。 ・土曜勤務についても、「事前申告で休める」ことをあえて記載し、柔軟性をアピール。 |
3名応募あり。30代未経験女性採用。 | |
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<旭川市> 食品工場の軽作業スタッフ / 食品加工工場 (シゴトガイド) |
・完全に裏方作業であることを明記。 ・主婦(夫)向けにお子さんの体調不良によるお休みOKを記載。 ・単純作業であることを明記し、未経験やブランクがある方にもアピール。 ・シフト例として、実際にアルバイト・パートが働いている時間を記載。 |
計5週間の掲載で7人応募。 | |
【成功のポイント】
- 柔軟性の可視化: 「急な休みOK」「勤務時間が選べる」「週の最低日数を下げる」など、生活スタイルに合わせた働き方ができる点を強調することで、時間の制約がある主婦や学生などが働くイメージをつけやすくなります。
- 懸念点の先回り: ネガティブに捉えられがちな点(例:土曜勤務)も、事前に相談できる柔軟性があることをセットで記載し、不安を払拭することで、応募意欲を下げないようにします。
- 髪型・髪色・ネイルの自由度:自分のスタイルを変えずに働きたいと思っている求職者は一定数います。もし働く環境の自由度が高ければ、それを記載することでアピールポイントとなります。
3.信頼度を高める「求人の背景」や「研修制度」をしっかりと伝えた事例
求人の背景や教育体制といった「企業の考え」をしっかりと伝えることで、求人情報に厚みと信頼性が生まれます。これは応募者の安心感につながります。
| 募集職種 / 業界 (掲載メディア) |
改善したポイント | 採用に至った反応 |
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<旭川市> フェイシャルエステスタッフ / 薬局
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・スタッフ・作業風景の写真を掲載。 ・募集背景、研修内容を詳細に記載。 ・Indeedを利用。 |
狙っていた人材層からの応募が劇的に増加。 |
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<苫小牧市> / 食品製造工場 |
・仕事内容の詳細追加。 ・募集の背景を新規追加。 ・教育・研修について新規追加。 ・Indeedのキーワード検索を「40〜50代」から「30代・40代・50代」に幅を持たせて追加。 |
1名応募から5名応募に増加。17歳高校生・48歳女性を採用。 |
【成功のポイント】
- 募集背景の開示: 「なぜこのポジションを募集しているのか」を伝えることで、企業への共感や信頼感が生まれます。
- 教育・研修体制の明確化: 未経験者にとって最大の不安である「仕事の覚え方」を具体的に記載し、安心してスタートできる環境を整えます。
- 発信媒体の複合利用: 地域の求人媒体(シゴトガイド/しゅふきた)で取材・原稿を深掘りし、その情報をIndeedなどの採用プラットフォームにも活用・拡散することで、接触機会と情報の濃度の両方を高めています。
まとめ:今すぐできる「求人広告」の見直しチェックリスト
最低賃金の上昇は採用における逆風となり得ますが、今回ご紹介した成功事例を参考に、給与以外の価値を掘り起こし、求職者に寄り添った形で発信すれば、最低賃金でも採用を成功させられる可能性は十分にあります。
求職者に響く求人原稿の改善は単なる「テクニック」ではなく、「より働きやすい職場環境を客観的に見つめ直し、改善する」という企業努力そのものです。この一歩が、一時的な採用成功だけでなく、従業員の定着率向上や企業のブランドイメージ向上という長期的なリターンを生み出します。
採用担当者様が、自社の求人原稿を見直すときには、ぜひ以下のチェックリストもご活用ください。
- 【ターゲットの不安解消】 職場の雰囲気や働く環境を、写真や具体的な数値でしっかり伝えられていますか?
- 【柔軟性の訴求】 お子様の急な病気や家庭の事情など、求職者の「休みやすさ」について具体的に明記していますか?
- 【応募のハードルを下げる】 勤務時間や日数を「固定」ではなく「応相談」「柔軟に対応可能」として、間口を広げられていますか?
- 【信頼度の向上】 なぜ募集しているのかという「募集背景」や、入社後の「教育・研修内容」を詳細に記載していますか?
- 【小さなメリットの発見】 制服の洗濯、休憩所の快適さ、珍しい自販機の設置など、給与に換算できない「うちの会社だけのささやかではあるけれど嬉しい特典」を見つけて記載していますか?
自社内だけではなかなか会社の良さや他社と比較した強みに気が付かないものです。
「ヒトキタ」を運営する北海道アルバイト情報社では、北海道に根ざして50年以上、採用に特化したプロフェッショナルとして多くの企業様の採用に携わってきました。
貴社が気づいていない魅力や他社と比較した優位性を第三者目線で発見し、効果的にアピールするための原稿作成・媒体活用をサポートしています。
採用に特化した私たちが、客観的な視点で貴社の「本当の強み」を引き出し、採用成功に繋げますので、まずはお気軽にご相談ください。
Writer
ヒトキタ編集部 小林 陽可
Profile
法人営業や編集職を経て、広報を担当。現在は、SNSや自社サイトの運用をはじめ、イベントやメルマガを活用した販促・営業支援企画も手掛けている。