アルバイトを採用する際、雇用契約や社会保険の手続きなどでさまざまな書類が必要になります。しかし、雇用する人によって必要な書類が異なるため、何を用意すればよいか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、アルバイト採用時に必要な書類を「雇用契約に関するもの」「社会保険に加入する場合」など複数に分類して分かりやすく解説します。さらに、高校生や外国人を雇用するケースについても詳しく解説しているので、アルバイト採用をご担当される方はぜひ最後までご覧ください。
目次
アルバイトの雇用契約に関する必要書類
アルバイトの雇用契約を結ぶ際に必要な書類として、以下の3つを解説します。法律上必ず準備が必要な書類もあるため、採用担当者はしっかり確認しておきましょう。
1.労働条件通知書
2.雇用契約書
3.待遇の差に関する説明書
労働条件通知書
労働条件通知書とは、アルバイトを含む労働者を採用する際、労働条件を明示するために企業が必ず交付しなければならない書類です。法律で義務付けられており、交付を怠ると罰則の対象となる場合があります。
労働条件通知書に明示する項目は、「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」の2つに分けられます。
絶対的明示事項(必ず明示が必要な項目)
・労働契約の期間
・就業の場所と業務内容
・始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、時間外労働の有無
・賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締め日・支払日、昇給
・退職に関する事項(解雇の事由を含む)
・契約期間内に無期転換申込権が発生する場合は、無期転換申込みに関する事項および無期転換後の労働条件
相対的明示事項(定めがある場合に明示が必要な項目)
・退職手当
・臨時に支払われる賃金、賞与、最低賃金額
・労働者に負担させる食費や作業用品
・安全・衛生
・職業訓練
・災害補償、業務外の傷病扶助
・表彰、制裁
・休職
アルバイトが有期雇用契約の場合、契約更新の基準や上限の定めがある場合はその内容も明示が必要です。契約内容によって必要な項目が異なるため、雇用するアルバイトの契約内容を確認しながら作成しましょう。
雇用契約書
雇用契約書は、企業とアルバイトスタッフが労働条件に合意したことを証明する書類です。法律で作成が義務付けられているわけではありませんが、労働条件について書面で確認し合うことで、後のトラブルを未然に防ぐために作成するのが一般的です。
企業とアルバイトの双方が内容を確認し、署名・捺印をして各自で保管します。実際に書類作成を進める上では、労働条件通知書と雇用契約書を一体化させた「労働条件通知書兼雇用契約書」として作成することも可能です。
待遇の差に関する説明書
パートタイム・有期雇用労働法に基づき、アルバイトスタッフから正社員との待遇差について説明を求められた際に必要な書類です。具体的には、手当や福利厚生、教育訓練などの違いと、その理由を説明します。説明を求められたにも関わらず、説明を拒否したり、虚偽の内容を伝えたりすると法律違反となる可能性があるため注意が必要です。日ごろから、待遇差の内容とその理由を整理しておくことが大切です。
アルバイトが各種社会保険に加入する場合の必要書類
アルバイトが社会保険や雇用保険の加入条件を満たす場合に、提出を求める必要書類として以下の3つを解説します。
1.マイナンバーが記載されている書類
2.雇用保険被保険者証
3.健康保険被扶養者(異動)届
各種社会保険の加入条件についても後ほど解説しますので、必要な書類とあわせてご確認ください。
マイナンバーが記載されている書類
社会保険や雇用保険の手続きには、従業員のマイナンバー(個人番号)の提出が必須です。具体的には、マイナンバーカードのコピー、もしくはマイナンバーが記載された住民票の写しなどを提出してもらうのが一般的です。
収集したマイナンバーは、法律で定められた税や社会保障に関する行政手続きにのみ利用が限られ、厳重な管理が義務付けられています。提出を依頼する際は、利用目的を明確に伝え、適切な取り扱いを徹底することが企業の責任として重要です。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していたことを証明する書類です。アルバイトが雇用保険の加入条件を満たす場合、この書類に記載された被保険者番号をもとに加入手続きを進めます。以前の職場で雇用保険に加入していたアルバイトを採用する場合に、提出を求めましょう。もし本人が紛失してしまった場合は、本人の住所を管轄するハローワークで再発行が可能です。
健康保険被扶養者(異動)届
健康保険被扶養者(異動)届は、採用したアルバイトに健康保険の扶養に入れる家族(配偶者や子どもなど)がいる場合に提出が必要な書類です。扶養に入れるには年間収入が一定額以下であるなどの条件を満たす必要があります。選考時に扶養家族の有無を確認し、該当する場合は速やかに提出を促しましょう。
【補足】アルバイトの社会保険や雇用保険への加入条件
健康保険 | 雇用保険 |
1週間の所定労働時間が20時間以上 月額賃金が8.8万円以上 2カ月を超える雇用の見込みがある 学生ではない(夜間や定時制の学生は加入対象) 従業員数51人以上の企業に勤務(2024年10月からは51人以上に拡大) |
1週間の所定労働時間が20時間以上 31日以上の雇用見込みがある |
採用するアルバイトがこれらの条件に該当するか確認し、必要に応じて各種書類の準備を進めましょう。
アルバイトの税務手続きに関する必要書類
アルバイトの税務手続きに必要な書類は、以下の3つです。年末調整や住民税の納付に関わる重要な書類なので、提出が遅れないよう確認しておきましょう。
1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2.源泉徴収票
3.特別徴収への切り替え申請書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
この書類は、年末調整で所得税の過不足を精算するために必要となります。扶養家族の有無などに応じて、毎月の給与から源泉徴収する所得税額を決定する際にも用いられます。年末調整を行うアルバイトには必ず提出を求めましょう。ただし、複数のアルバイト先がある場合は、「主たる給与の支払を受けている」1社にしか提出できないため、事前に確認し説明することが重要です。
源泉徴収票
同じ年に前の職場で給与の支払いを受けていた場合には、源泉徴収票の提出を求めましょう。これは、前職で徴収された所得税額と自社で支払う給与を合算して年末調整を行うために必要な書類です。年の途中で入社したアルバイトで前職がある場合は、必ず提出を依頼してください。もし手元にない場合は、前の職場に連絡して再発行してもらうように促しましょう。
特別徴収への切り替え申請書
「特別徴収への切り替え申請書」は、アルバイトの住民税の納付方法を、個人で支払う「普通徴収」から、給与から天引きする「特別徴収」に切り替えるための書類です。前の会社を退職した際などに普通徴収に切り替わっている従業員を雇用した場合に、市区町村へ提出します。
法律上、給与を支払う事業主には住民税を特別徴収する義務があるため、入社時に住民税の納付状況を確認し、必要に応じて手続きを行いましょう。
高校生のアルバイトを雇用する際の必要書類
未成年である高校生のアルバイトを雇用する際には、年少者を保護する観点から特定の書類の提出が必要なケースがあります。具体的には、以下の2つです。高校生をアルバイトとして雇用する際は必ず確認しましょう。
1.戸籍証明書
2.保護者の同意書
戸籍証明書
戸籍証明書(または住民票記載事項証明書)は、高校生の年齢を確認するために必須の書類です。労働基準法第57条により、18歳未満の労働者を採用する場合、企業はその年齢を証明する公的な書類を事業所に備え付けておくことが義務付けられています。
本人確認としては一般的である運転免許証やマイナンバーカードでは代替できません。必ず市区町村が発行した公的な証明書を提出してもらう必要があるため、採用時にその旨を明確に伝えましょう。
保護者の同意書
保護者の同意書は、未成年者が労働契約を結ぶことに対して、保護者が同意していることを書面で確認するための書類です。労働基準法第57条により、事業場に備え付けることが義務付けられています。
特定のフォーマットはありませんが、企業側で用意し、保護者に署名・捺印をしてもらうのが一般的です。同意書には、アルバイトとして働くことを許可する旨と、保護者の氏名、住所、連絡先などを記載してもらいましょう。
外国人のアルバイトを雇用する際の必要書類
外国人留学生をアルバイトとして雇用する場合、日本で就労する資格があるかどうかの確認が不可欠です。
まず、在留カードを提出してもらい、以下の2点を確認しましょう。
1.在留資格
2.就労の可否
在留カードの裏面に「許可:原則週28時間以内」と記載があれば、その時間内で就労が可能です。一方、「許可:資格外活動許可書に記載された範囲内の活動」と書かれている場合は、資格外活動許可書も提出してもらい、記載内容に沿って業務ができるかを確認する必要があります。
企業が独自でアルバイトに提出させる書類
法律上の義務はありませんが、企業によってはアルバイト採用時に独自で提出を求める書類があります。労務管理をスムーズに進めるため、必要に応じて以下の書類を準備しましょう。
1.入社誓約書
2.秘密保持誓約書
3.給与振込口座の登録申請書
4.通勤経路・交通費の申請書
5.身元保証書
6.健康診断書
入社誓約書
入社誓約書は、採用したアルバイトが会社の就業規則やルールを守ることを誓約するための書類です。法律上の作成義務はありませんが、入社時に企業のルールを再認識させ、トラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。就業規則の遵守、機密保持、損害賠償などに関する項目を盛り込むのが一般的です。
秘密保持誓約書
秘密保持誓約書は、アルバイトが業務上知り得た企業の機密情報を外部に漏らさないことを約束させるための書類です。顧客情報や営業上のノウハウなど、企業の重要な情報資産を守るために提出を求めます。特に個人情報を取り扱う部署で雇用する場合や、退職後の情報漏洩リスクに備えたい場合に有効です。
給与振込口座の登録申請書
給与を銀行振込で支払うために、アルバイト本人名義の口座情報を提出してもらう書類です。金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義人などを正確に記入してもらいます。給与支払いをスムーズに行うための基本的な書類であり、多くの企業が提出を求めています。通帳やキャッシュカードのコピーを添付してもらうことで、記入ミスによる振込エラーを防ぐことができます。
通勤経路・交通費の申請書
この書類は、アルバイトの自宅から勤務先までの通勤経路と交通費を申告してもらうものです。企業が定めたルールに基づき、適切な通勤手当を支給するために必要となります。利用する交通機関、乗車区間、運賃などを具体的に記入してもらい、最も経済的かつ合理的な経路であることを確認したうえで、非課税限度額の範囲内で交通費を支給するのが一般的です。
身元保証書
身元保証書は、アルバイトが会社に損害を与えた場合に、本人と連帯して保証人が賠償責任を負うことを約束する書類です。同時に、アルバイトの経歴や人物像に問題がないことを保証してもらう目的もあります。保証人は、一般的に親や配偶者など、安定した収入のある人物に依頼することが多いでしょう。ただし、保証人が負う責任の範囲には法律上の制限があり、企業が過大な請求をすることはできません。
健康診断書
健康診断書は、アルバイトの健康状態を把握し、安全に業務を行えるかを確認するために提出を求める書類です。労働安全衛生法では、常時使用する労働者に対し、雇い入れ時の健康診断を義務付けていますが、3カ月以内に健康診断を受診している場合は、健康診断書の提出で代用できます。あらかじめ持病などを把握することで、適切な業務を割り振ることができ、安心して働いてもらうことにもつながります。
アルバイト採用時の必要書類はいつまでに提出させる?
アルバイト採用時の必要書類は、原則として入社日までに提出してもらうのが最も望ましいでしょう。特に社会保険や雇用保険に関する書類は、手続きに期限が設けられているため、速やかな回収が不可欠です。もし入社日までの提出が難しい場合でも、遅くとも入社日から2週間以内にはすべてそろえてもらいましょう。提出が遅れると、給与計算や保険の資格取得手続きに支障が出る可能性があることを事前に伝え、協力を求めることでスムーズな回収につながります。
アルバイト採用時の必要書類はケース別に整理しよう
本記事では、アルバイトを雇用する際に必要な書類を、さまざまなケースに分けて解説しました。
アルバイトの雇用形態や個人の状況によって、必要となる書類は大きく異なります。法律で提出が義務付けられているものから、企業の判断で提出を求める書類まで多岐にわたるため、自社ではどの書類が必要なのかを事前に整理しておくことが重要です。
チェックリストを作成するなどして、提出漏れや手続きの遅延を防ぎ、円滑な受け入れができる体制を整えましょう。
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Writer
ヒトキタ編集部 友坂智奈
Profile
コンテンツメディア部にてユーザー向け施策の企画・サイト運営に従事。フリーペーパー編集などを手掛け、現在は広報・販促・営業支援・デザインを行う。