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自社の求人票にある「給与」や「残業時間」の記載内容は、定期的に見直されていますか。
近年、労働関連法規の改正や求職者の意識変化によって、求人票における情報の透明性はかつてないほど重要視されています。特に「固定残業代(みなし残業代)」制度を導入している場合、記載方法を一歩間違えれば、職業安定法違反として罰則の対象になったり、ハローワークや民間求人媒体から掲載を拒否されたりするリスクがあります。
また、求職者の間では「固定残業代=定額働かせ放題」というネガティブなイメージが根強く、曖昧な表記は「ブラック企業ではないか」という疑念を抱かせる最大の要因となります。
本記事では、厚生労働省のガイドラインに基づき、法的義務である「4つの必須記載事項」から、求職者の不信感を払拭し応募率を高めるための「戦略的なライティングテクニック」までを徹底解説します。正しいルールをマスターし、貴社の誠実さを伝える「選ばれる求人票」を作成しましょう。
目次
固定残業代制度を採用する場合は、求人票への必須記載事項が4つある
固定残業代制度(みなし残業代)とは、実際の残業時間の有無にかかわらず、あらかじめ一定時間分の残業代を固定給に含めて支払う制度です。この制度を導入している企業が求人を出す際、厚生労働省の指針(職業安定法に基づく指針)により、以下の4項目を明記することが義務付けられています。
記載に不備があると、ハローワークでは受理されず、民間媒体でも掲載停止や修正依頼の対象となります。まずは自社の求人票が以下の3点を満たしているかチェックしてください。
①固定残業代を除いた基本給の額
まず、「月給〇〇万円(固定残業代含む)」という総額表示だけでは不十分です。必ず「固定残業代を除いた基本給」がいくらなのかを分離して記載しなければなりません。
基本給が明確でないと、求職者は自分の本来の給与水準を正しく判断できません。また、基本給を低く設定し、多額の固定残業代で「見かけの月給」を底上げしている企業を見極めるための重要な指標となります。
記載例:
- NG:月給25万円(固定残業代含む)
- OK:月給25万円(基本給21.2万円+固定残業代3.8万円)
②固定残業代に関する労働時間数と金額
「何時間分の残業代として、いくら支払っているのか」のセット表記も必須です。金額だけ、あるいは時間数だけの記載は認められません。これにより、求職者は「1時間あたりの残業単価」を計算できます。この単価が法定の割増賃金(原則1.25倍)を下回っていないか、透明性を確保するためです。
記載例:
- NG:固定残業代3.8万円を支給
- OK:固定残業代3.8万円(20時間相当分)を含む
③超過分は別途支給する旨の明記
「固定残業代として設定した時間を超えて残業が発生した場合、その差額を支払う」という文言は、法的にも実務的にも極めて重要です。この明記がないと、「どれだけ残業しても定額しか払わない(定額働かせ放題)」という違法な運用を疑われてしまいます。また、実際には「超過分を払うのは当たり前」であっても、求人票にその一文があるかないかで、企業のコンプライアンス意識が判断されます。
記載例:「20時間を超える時間外労働分については、超過分を別途全額支給します
【これは避ける】求人票の残業時間表記でよくあるNG例
法的な義務を知っていても、実際の求人票では意図せず不適切な表現になってしまうケースが多々あります。以下に挙げる4つのNG例は、特によく見られるミスです。
NG例①:固定残業代の時間数・金額が不明確
「月給25万円(各種手当て含む)」「月給30万円(みなし残業代含む、一律手当含む)」といった、中身がブラックボックス化している表記です。求職者は「実際の手取りはいくらか」「何時間働かされるのか」が分からず、不信感を持って離脱してしまいます。
正しい表記例:月給30万円(基本給24万円+固定残業代6万円(30時間分含む)。30時間超過分は別途支給
NG例②:計算すると最低賃金を下回っている
見かけの月給を高く見せようとして、基本給を極端に低く設定した場合に起こります。2025年10月の改訂で北海道の最低賃金は1,075円。今後も最低賃金は上昇傾向にあるため、「基本給 ÷ 所定労働時間」の計算は必ず確認する必要があります。
例:月給22万円(固定残業代5万円/40時間分含む)の場合。
まず、月給から固定残業代を引いて基本給を出します。
22万円-5万円=17万円(基本給)所定労働時間が170時間だとすると、時給換算は以下のようになります。
170,000円 ÷ 170時間 =1,000
NG例③:「残業なし」と記載しているのに固定残業代がある
勤務時間欄には「残業なし」「定時退社」と書きつつ、給与欄に「固定残業代」が含まれているケースです。求職者から見れば「嘘をついている」としか映りません。「残業がないなら固定残業代を払う必要はないはずだ」という論理的な矛盾を突かれます。本当に残業がないのであれば、固定残業制度を廃止し、残業が発生した時にのみ別途支給する形態にするのが誠実な対応です。
NG例④:休日出勤・深夜労働の割増分を固定残業代に含めている
「固定残業代5万円(時間外・休日・深夜労働分を含む)」という表記は非常に危険です。
法定割増率は、時間外労働が25%増、休日労働が35%増、深夜労働が25%増となります。固定残業代は原則として「通常の時間外労働(25%増)」を対象とし、休日や深夜分は別途計算して支給するか、内訳(例:時間外30時間分+深夜10時間分)を明示する必要があります。
残業時間の表記サンプル
求職者が「残業」に対して抱くイメージや許容度は、職種によって大きく異なります。そのため、全職種で一律の書き方をするのではなく、その職種特有の働き方(直行直帰の有無、繁忙期の波、定時退社の頻度など)を踏まえて記載することが、ミスマッチを防ぎ、応募効果を高める鍵となります。
以下に、職種別の効果的な表記サンプルをご紹介します。
1.営業職
営業職は外勤が多く、労働時間の管理が難しいため「固定残業代制度」を導入しているケースが多いです。 この場合、単に時間を書くだけでなく、「ダラダラ残るわけではない(効率重視)」というニュアンスや、「金額の算出根拠」を明確にすることで、ブラック企業への懸念を払拭できます。
記載例:
・9:00〜18:00(休憩60分)
・残業:月平均20時間程度
※お客様への訪問状況により、直行・直帰も可能です。
※19:30にはオフィスの電気が消灯するため、深夜に及ぶ残業はありません。
※給与には固定残業代38,000円(20時間分)を含みます。
※20時間を超えた場合は、別途超過分を全額支給します:
2.エンジニア職(プロジェクト制)
プロジェクト単位で動くエンジニアやクリエイティブ職は、納期前とそれ以外で残業時間に大きな差が出がちです。 「月平均20時間」とだけ書くと、繁忙期(実際は40時間など)に入社した人が「話が違う」と感じてしまいます。変動があることを正直に伝えつつ、フレックス等の制度でバランスを取っていることをアピールしましょう。
記載例:
・フレックスタイム制(標準労働時間 1日8時間/コアタイム 11:00〜15:00)
・残業:月平均15〜25時間程度
※納期前は月30〜40時間程度になることもありますが、プロジェクト終了後は長期休暇を取得したり、定時(15:00以降)で早上がりするなど調整が可能です。
※リモートワーク率50%(週2〜3日出社)
求職者の不安を解消する残業時間の書き方3つのテクニック
法的義務を満たすのは「最低ライン」です。採用に強い企業は、そこからさらに一工夫加えています。求職者が抱く「本当はもっと残業させられるのでは?」という不安を、情報開示の力で解消しましょう。
テクニック①:固定残業時間と実際の平均残業時間を併記する
固定残業代を30時間分に設定しているからといって、毎月30時間働く必要があるわけではありません。ここを混同している求職者は非常に多いです。
書き方の例:
「制度上、固定残業代は30時間分を支給していますが、実際の月平均残業時間は12時間です。」
効果:
「30時間分もらえるのに、実際には12時間しか働かなくていい=時給換算でお得」というポジティブな変換が起こります。また、全社平均だけでなく「配属部署の平均」まで書くと、信頼性はさらに高まります。
テクニック②:「超過分は1分単位で全額支給」を強調する
多くの求職者が恐れているのは「サービス残業」です。労働基準法では残業代の1分単位での支払いが義務付けられていますが、慣習的に15分単位などで切り捨ててしまっている企業も少なくありません。あえて『1分単位』と明記することで、コンプライアンス遵守の姿勢を強力にアピールできます。
書き方の例:
「当社では勤怠管理システムを導入しており、1分単位で労働時間を記録しています。固定残業時間を超えた分は、翌月の給与にて1分単位で全額支給することをお約束します。」
効果:
「1分単位」という具体的なワードが、クリーンな労務管理を行っている証拠として機能します。
テクニック③:繁忙期・閑散期の残業時間の変動を記載する
「月平均20時間」とだけ書かれているよりも、波があることを事前に知らされるほうが求職者は安心します。
書き方の例:
「通常月は10時間程度ですが、決算期の3月・9月のみ、平均25時間程度の残業が発生します。」
効果:
入社後の「こんなはずじゃなかった」というギャップを防げます。繁閑を正直に開示する姿勢は、誠実な企業文化の裏返しとして評価されます。
「ブラック企業」と誤解されないための表現の工夫
同じ制度でも、伝え方ひとつで印象は180度変わります。固定残業代を「会社が残業を強いるための免罪符」ではなく、「社員の効率的な働き方を支援する仕組み」として再定義しましょう。
「効率的に働くための制度」というメッセージを添える
固定残業代のメリットは、「早く仕事を終えても給与が減らないこと」にあります。
添えるべき文言:
「当社ではダラダラ残業を良しとせず、効率よく成果を出して早く帰ることを推奨しています。固定残業代は、頑張って早く帰った人への『報奨金』のような位置づけです。」
このように、制度の思想を語る一文を加えるだけで、求職者の受け止め方は劇的に変わります。
基本給の低さは「モデル年収」でカバーする
固定残業代を分離して書くと、どうしても「基本給」が単体で目立ってしまい、他社より低く見えてしまうことがあります。その場合は、年収ベースのモデルを併記してフォローしましょう。
例:
月給25万円(基本給21万円+固定残業代4万円)
年収例
380万円(入社1年目/月給25万円+賞与年2回)
450万円(入社3年目・リーダー職/月給30万円+賞与年2回)
月給という点ではなく、年収という線で示すことで、給与体系全体の納得感を高めることができます
残業削減の取り組みを具体的に記載する
「残業を減らそうとしています」というスローガンだけでなく、具体的な施策をセットで書きましょう。
- 毎週水曜日のノー残業デー実施
- 20時以降のPC強制シャットダウン
- 業務効率化のための最新ツールの導入(RPAやAIチャット等)
- 実績値:「前年比で残業時間を15%削減しました」
こうした「動かぬ証拠」を積み上げることで、求職者の不安は確信に近い安心感へと変わります。
まとめ:正しい表記は「企業を守り、応募を増やす」
求人票における残業時間の表記は、単なる事務作業ではありません。それは、貴社が法令を遵守し、従業員の労働時間を大切に考えていることを示す「ラブレター」の一部です。
- 3つの必須項目(基本給、時間・金額、超過分支給)を必ず明記する。
- 実態(平均残業時間)を併記し、制度上の枠とのギャップを埋める。
- 「効率化を推奨する」というポジティブな文脈で制度の意義を伝える。
これらを徹底することで、コンプライアンス上のリスクを回避できるだけでなく、情報の透明性を重視する優秀な人材からの応募を勝ち取ることができるようになります。
北海道での求人広告作成・採用のご相談は「HAJ」へ
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私たちは「ジョブキタ」をはじめとする北海道特化型の求人メディアを長年運営しており、地域の労働法規の動向や、地元の求職者が何を重視しているかを熟知しています。
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Writer
ヒトキタ編集部 友坂 智奈
Profile
法人営業や編集職を経て、広報を担当。現在は、SNSや自社サイトの運用をはじめ、イベントやメルマガを活用した販促・営業支援企画も手掛けている。