不採用者の履歴書は「破棄」でいい?法的な義務とリスク回避の鉄則

不採用の理由

採用活動を行っていると、どうしても避けて通れないのが不採用となった応募者の書類対応です。採用を見送ることになった応募者から預かった履歴書や職務経歴書。これらをどう扱うべきか、頭を悩ませている採用担当者の方は意外と多いのではないでしょうか。

「郵送で返却すべき?」「シュレッダーで処分していいの?」「後でトラブルにならないか心配…」

今回は、そんな履歴書の取り扱いに関する法的解釈から、個人情報保護の観点、そして応募者とのトラブルを未然に防ぐための具体的な実務フローまで、徹底的に解説します。

そもそも履歴書の「返却義務」はある?

結論から言えば、企業側に不採用者の履歴書を返却する法的義務はありません。求職者が企業に応募する際、履歴書を提出した時点で、その書類の「所有権」は求職者から企業側へと移転したとみなされるのが一般的な法的解釈です。したがって、企業は自社の判断で、保管あるいは破棄を選択することができます。

返却義務はないが「管理責任」は重大

しかし、ここで絶対に勘違いしてはいけないのが、「返却しなくていい=どう扱ってもいい」ではないということです。履歴書は、氏名、住所、電話番号はもちろん、顔写真、学歴、職歴、資格、家族構成など、極めて秘匿性の高い「個人情報の塊」です。

個人情報保護法において、企業は個人情報を適切に管理する義務を負います。万が一、不採用であることを理由に書類を裏紙へ転用したり、未処理のまま廃棄したりして情報が漏洩した場合、企業の社会的信用は失墜し、損害賠償請求などの法的トラブルに発展するリスクすらあります。

なぜ「返却してほしい」と願う応募者が多いの?

企業側に返却義務がないにもかかわらず、返却を希望する応募者が少なくないのはなぜでしょうか。ここには応募者側の切実な心理と事情があります。これらを理解しておくことが、トラブル防止の第一歩です。

1. 個人情報漏洩への不安

昨今、個人情報の流出ニュースが世間を騒がせていることもあり、応募者は「自分の顔写真や住所が入った書類が、知らないところで杜撰(ずさん)に扱われているのではないか」という漠然とした不安を抱えています。「手元に戻ってくれば、確実に他人の目に触れない」という安心感を求めているのです。

2.「返却=誠意」という認識

多くの企業が慣習的に返却を行っているため、「きちんとした会社なら返却してくれるはずだ」という認識を持っている求職者は少なくありません。返却がないだけで「冷たい会社」「マナーがない」と判断されてしまう可能性があります。

トラブルを防ぐための3つの選択肢

では、企業としては具体的にどう対応すべきでしょうか。主な対応策は以下の3パターンに分かれます。自社のリソースや採用ポリシーに合わせてルールを明確化しましょう。

パターンA:不採用者全員に履歴書を返却

最も丁寧で、応募者からのクレームリスクが低い方法です。

  • メリット: 「丁寧な会社」という好印象を与え、企業ブランディングに寄与する。
  • デメリット: 返送用の封筒準備、宛名書き、郵送費などのコストと手間がかかる。

パターンB:責任を持って破棄

多くの企業が採用している、効率的な方法です。

  • メリット:  返送の手間とコストを削減できる。
  • デメリット:  事前の周知がないと、「どうなったのか?」と問い合わせやクレームが入る可能性がある。

パターンC:応募時に「返信用封筒」を同封してもらう

返却を希望する人にのみ、切手を貼った返信用封筒を同封してもらう方法です。

  • メリット: 返却希望者のみに対応でき、コスト負担も応募者持ちとなる。
  • デメリット:応募のハードルが少し上がる。「ケチな会社」と思われるリスクがある。

重要なのは「募集時の明記」。そのまま使える記載例

どのパターンを選ぶにせよ、最も重要なのは「募集のタイミングで、履歴書の扱いを明言しておくこと」です。後出しジャンケンが最もトラブルになりやすいためです。求人広告や募集要項には、以下の文言を記載しておくことが望ましいでしょう。

記載例1:不採用時は「破棄」する場合

【応募書類の取り扱いについて】 
選考の結果、採用に至らなかった場合、お預かりした履歴書・職務経歴書等の応募書類は、弊社にて責任を持って破棄(シュレッダー処理等)いたします。返却はいたしませんので、あらかじめご了承ください。

記載例2:不採用時は「返却」する場合

【応募書類の取り扱いについて】
選考の結果、採用に至らなかった場合、お預かりした履歴書・職務経歴書等の応募書類は、選考終了後、速やかに郵送にてご返却いたします。

記載例3:返却希望者のみ対応する場合

【応募書類の取り扱いについて】 
応募書類は原則として弊社にて責任を持って破棄いたします。返却をご希望の方は、応募時にその旨をお知らせいただくか、切手を貼付した返信用封筒を同封してください。

重要なのは「募集時の明記」。そのまま使える記載例

求人広告に書いてあっても、見ていない応募者はいます。念には念を入れ、以下のタイミングでも周知徹底しましょう。

面接時のアナウンス

面接終了時に一言添えるだけで、トラブルは激減します。

「本日はありがとうございました。合否の結果に関わらず、お預かりした履歴書はこちらで責任を持って破棄させていただきますが、よろしいでしょうか?」

この「よろしいでしょうか?」という合意形成が、後々の「返してほしかった」というクレームを完全に防ぎます。

不採用通知メールへの記載

不採用メールの末尾にも、処理方法を記載します。

「尚、お預かりいたしました応募書類につきましては、個人情報保護法に基づき、弊社にて責任を持って裁断処理させていただきます。何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。」

正しい「破棄」の方法とは?

「破棄します」と宣言したからには、企業の担当者として、完璧に破棄しなければなりません。

シュレッダー処理

必ず「クロスカット」や「マイクロカット」など、復元不可能なレベルに細断できるシュレッダーを使用します。ストレートカットではつなぎ合わせれば読めてしまうため危険です。

溶解処理サービス 

応募者が多い場合は、段ボールごと溶解処理してくれる専門業者の利用が確実です。溶解証明書を発行してくれる業者であれば、万が一の際のエビデンスにもなります。

絶対にやってはいけないこと

  • そのままゴミ箱へ捨てる
  • 裏紙として社内で再利用する
  • 担当者のデスクの上に放置する

デジタルデータ(PDF・メール添付)の扱いは?

最近増えているWeb応募やPDF送付の場合も、考え方は同じです。「データだから返却できない」のは当然ですが、「データの完全消去」が求められます。

メールサーバーからの削除
PCの「ダウンロード」フォルダからの削除
採用管理システム上のデータ削除

これらを怠り、何年も前の応募者のデータが社内サーバーに残っている状態は、セキュリティリスクそのものといえます。定期的にデータを棚卸しして、削除するルールを設けましょう。

まとめ:不採用者も「将来のお客様」である

「不採用者の履歴書をどうするか」という問題は、単なる事務処理ではありません。それは、企業が「人」をどう大切にしているかを示すバロメーターでもあります。

不採用になった方は、もう関係ない人ではありません。あなたの会社の商品を買うお客様かもしれないし、SNSで評判を広めるインフルエンサーかもしれません。あるいは数年後、スキルアップして再度応募してくれるという可能性もあります。

 「返却」を選んでも「破棄」を選んでも、そこに「相手の個人情報を大切に扱う誠意」と「事前の丁寧な説明」があれば、トラブルは起きません。むしろ、「不採用だったけれど、最後まで対応がしっかりした良い会社だった」という印象を残すことができます。

ぜひ自社の「履歴書管理フロー」と「求人広告の記載」を見直してみてください。小さな配慮が、会社の信頼を守り、将来の良質な人材確保につながるはずです。

求人広告の表現にかかわるご相談や、わからないことがありましたら、いつでもヒトキタにお問い合わせください。

Writer

ヒトキタ編集部 庵 彩乃


Profile

札幌・函館・北見エリアの求人営業を経験後、現在は採用お役立ち記事の制作や自社メディア・イベントの販促、企業向けマーケティングを担当。