従業員の退職手続きで迷わない!何をいつまでにやるべき?担当者がやるべきこと

退職手続き

「従業員から退職の申し出があったけれど、何から手をつければいいの?」「手続きが多すぎて、どこまでが会社の義務で、期限はいつまでなのか不安…」

このように従業員の退職手続きは、多岐にわたり、法律で定められた期限もあるため、担当者にとって大きなプレッシャーになりがちですよね。特に、専門の総務・人事部門がない中小企業の担当者様は、本来の業務と並行してこれらの複雑な手続きを一人でこなさなければならないという大きな課題に直面していることでしょう。

退職手続きは、その全体像を時系列で整理し、「何を」「いつまでに」行うべきかを明確にすれば、決して難しいものではありません。この記事では、従業員の退職に伴う会社側の手続きを網羅し、明日からすぐに使えるチェックリストを用いて、退職日の前後でやるべきことを詳細に解説します。退職手続きの全体像を理解し、自信を持って抜け漏れなく手続きを進められるよう、ぜひこの記事をご確認ください。

まずは全体像を把握!従業員の退職手続きやることリスト

従業員の退職に際して会社が行うべき手続きは、社会保険、雇用保険、税金、そして社内での物品回収など多岐にわたります。一見複雑に見えますが、これらの手続きを「期限」を軸に時系列で整理すれば、ぐっと対応しやすくなります。まずは以下のチェックリストで全体像をつかみましょう。

タイミング

やるべきこと

担当窓口

退職日までに

・退職届の受理と退職日の確定

・回収物のリストアップと本人への通知

・交付書類の準備(源泉徴収票、雇用保険被保険者証など)

従業員本人

 

最終給与・退職金の計算と支払い準備

経理部門

 

社内設備(PC、メールアカウント等)の停止準備

情報システム部門

退職後5日以内

社会保険の資格喪失手続き

 年金事務所

退職後10日以内

雇用保険の資格喪失手続き・離職票の交付

 ハローワーク

退職後1カ月以内

住民税の切り替え手続き

 市区町村

その他(随時)

労働者名簿、賃金台帳の記録変更

社内管理

このチェックリストが、手続きを円滑に進めるためのベースラインとなります。次の章からは、このリストに基づき、各手続きの詳細な手順と注意点を解説していきます。

従業員の退職日までに会社が行う手続きと準備

退職日当日や、特に期限の短い退職後の社会保険・雇用保険の手続きをスムーズに進めるためには、「事前準備」が極めて重要です。ここでは、退職日までに完了させておきたい3つの準備について解説します。

1. 退職届の受理と退職日の確定

従業員から退職の申し出があった際、まず最初に行うべきは、正式な退職届を提出してもらうことです。

口頭での申し出だけでは、「言った、言わない」のトラブルに発展するリスクがあるため、必ず書面(退職届)で提出してもらい、会社として受理した事実を記録に残しましょう。これは、後の法的な手続きを行う上での根拠にもなります。

退職届を受理したら、本人と話し合い、双方合意の上で最終的な退職日を確定させます。民法上、退職の意思表示から2週間で退職が成立しますが、円満退社のためにも、引継ぎ期間なども考慮して明確な退職日を決定し、書面またはメールで記録を残しておきましょう。

2. 従業員から回収するものをリストアップする

退職日当日に従業員から返却してもらうものを、事前にリストアップし、本人へ伝えておくことで、当日の手続きがスムーズに進みます。

特に注意が必要なのは、健康保険証」の回収です。

健康保険被保険者証は、退職日をもって効力を失いますが、回収を忘れると、退職者が無効になった保険証を使って医療機関を受診してしまうリスクがあります。その場合、会社側は保険者(協会けんぽなど)から医療費の全額返還を請求されることになり、大きな手間と損失が発生しかねません。

回収リストは、退職者本人に事前に渡しておき、準備してもらうように依頼しましょう。一般的な回収物は以下の通りです。

  • 健康保険被保険者証(扶養家族がいる場合はその全員分)

  • 社員証、入館証、IDカード
  • 会社の名刺

  • 制服や作業着

  • 会社から貸与されたPC、スマートフォン、タブレット

  • 通勤定期券(現物支給の場合)

  • その他、経費で購入した備品や資料など

3. 従業員へ渡す書類を準備する

回収物と同時に、退職者へ交付が義務付けられている書類や、退職後の生活に不可欠な重要書類の準備も進める必要があります。これらの書類の交付が遅れると、退職者が次の職場で手続きができなかったり、失業手当の受給が遅れたりといったトラブルにつながります。

主に必要となる書類と、その目的は以下の通りです。

書類名

何のために必要か

交付期限

源泉徴収票

退職者が年末調整や確定申告を行うために必要。次の転職先に提出する。

 

退職後1カ月以内(※)

 雇用保険被保険者証

雇用保険に加入していた証明書。次の転職先に提出する。

会社保管の原本を返却

離職票

退職者が失業手当(基本手当)を受給するためにハローワークへ提出する。

退職者が希望し、退職後10日以内にハローワークへ手続き後

※:源泉徴収票の交付期限は「退職日から1カ月以内」ですが、速やかな準備を心がけましょう。

特に離職票は、発行に会社のハローワークへの手続きが必要ですが、退職者が失業手当を受給しない(すぐに次の会社に入る)場合は不要となることがあります。そのため、事前に本人の意向(発行を希望するかどうか)を必ず確認しておくことが重要です。希望者に対しては、速やかに発行手続きを行う必要があります。

従業員の退職後に行う社会保険・雇用保険・税金の手続き

従業員の退職後は、法的に定められた期限内に各種手続きを行う必要があります。この段階で担当者が間違いやすいポイントは、「何を」「どこへ」「いつまでに」を整理できていないことです。

ここでは、特に期限が厳しく重要な3つの手続きについて、ポイントを絞って解説します。

1. 【退職の翌日から5日以内】社会保険の資格喪失手続き

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続きは、期限が最も短い(退職日の翌日から5日以内)ため、最優先で対応が必要です。この手続きを行うことで、退職者は速やかに国民健康保険や国民年金、あるいは次の会社の健康保険・厚生年金に切り替えることができます。

●提出書類
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届

●添付書類
回収した健康保険被保険者証(扶養家族分も含む)

●提出先
年金事務所または健康保険組合

●提出期限
退職日の翌日から5日以内

届出書には、必ず回収した健康保険証(扶養家族分も含む)を添付する必要があります。郵送または電子申請が可能ですが、期限厳守のため、準備が整い次第速やかに提出しましょう。

2. 【退職の翌日から10日以内】雇用保険の資格喪失手続き

雇用保険の手続きは、社会保険に次いで期限が短い(退職日の翌日から10日以内)手続きです。

●提出書類
雇用保険被保険者資格喪失届

●提出先
会社を管轄するハローワーク

●提出期限
退職日の翌日から10日以内

退職者が離職票の交付を希望する場合は、上記に加えて「離職証明書」も併せて提出する必要があります。退職者の離職理由などを記載するため、時間がかかることがあります。

【注意点】
退職日時点で満59歳以上の従業員については、本人の希望にかかわらず離職票の交付が義務付けられています。これは、60歳以降の失業手当受給に関わる重要な手続きであるため、必ず手続きを行いましょう。

3. 【退職月による】住民税の手続き

住民税(市区町村民税・道府県民税)の手続きは、従業員の退職時期によって徴収方法が異なり、担当者が間違いやすいポイントの一つです。

住民税は、「前年の所得」に対して税額が決定され、通常は6月~翌年5月までの12回に分けて給与から天引き(特別徴収)されます。

従業員の退職に伴い、この「特別徴収」から、退職者本人が直接納付する「普通徴収」などに切り替える手続きが必要となります。

【6月1日~12月31日に退職した場合】

この期間に退職した場合、退職月の翌月以降の住民税は、原則として普通徴収に切り替わり、退職者の自宅に納付書が届きます。ただし、退職者の希望があれば、未徴収分を一括で最後の給与や退職金から天引きする「一括徴収」も可能です。

【翌年1月1日~5月31日に退職した場合】

この期間に退職した場合、未徴収分の住民税(5月分まで)は、原則として最後の給与または退職金から一括徴収することが会社に義務付けられています。す。

いずれの場合も、速やかに退職者の住所地の市区町村へ「給与支払報告・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書を提出し、住民税の徴収方法の変更を通知する必要があります。

もし手続きの期限を過ぎてしまったら?対処法と相談先

どんなに気を付けていても、急な退職や業務のひっ迫により、社会保険や雇用保険の手続き期限を過ぎてしまう可能性はゼロではありません。もし期限を過ぎてしまっても、焦らず落ち着いて誠実に対応することが重要です。隠したり、放置したりすることが、一番問題を大きくします。

まずは落ち着いて担当窓口に連絡を

手続きの期限を過ぎてしまったことに気づいたら、まず管轄の担当窓口へ電話連絡しましょう。

  • 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き:年金事務所

  • 雇用保険の手続き:ハローワーク

  • 住民税の手続き:市区町村役場の住民税担当課

電話では、状況を正直に説明し、遅れた理由すぐに対応する意思を伝えましょう。

場合によっては、手続き書類と一緒に「遅延理由書」の提出が必要になることもありますが、担当者の指示に従って提出すれば、特別なペナルティを課されることはほとんどありません。隠さずに報告し、迅速に指示に従うことが、最善の対処法です。

まとめ:退職手続きは段取りがすべて。人材の採用も計画的に

従業員の退職手続きは、やるべきことが多く、特に期限のプレッシャーから複雑に感じるかもしれません。しかし、一つひとつの作業を「退職日を起点とした時系列」で把握し、順番にこなせば必ず無事に完了できます。

最後に、手続きを円滑に進めるために特に重要なポイントを3つ振り返りましょう。

●期限のある手続き(社会保険5日、雇用保険10日)を最優先に:退職日を過ぎたらすぐに着手できるよう、事前準備を徹底しましょう。

●「回収」と「交付」のリスト管理で抜け漏れ防止:健康保険証の回収漏れや、退職者への書類交付漏れを防ぐために、チェックリストを活用しましょう。

●困ったときはすぐに専門機関へ相談:手続きの方法や期限に迷ったら、年金事務所やハローワーク、市区町村へすぐに問い合わせるのが、最も確実な解決策です。

従業員の退職は、会社にとって戦力ダウンであり、新たな人材を採用するきっかけでもあります。退職手続きと同様に、採用活動もまた計画的な準備が成功の鍵となります。

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Writer

ヒトキタ編集部 友坂 智奈


Profile

法人営業や編集職を経て、広報を担当。現在は、SNSや自社サイトの運用をはじめ、イベントやメルマガを活用した販促・営業支援企画も手掛けている。