未加入は罰則?雇用保険加入条件の落とし穴。ダブルワークや2028年改正の注意点も解説

「短時間のアルバイトなら、雇用保険は関係ないだろう」「学生だから手続きは不要だ」……あなたが採用担当者で、もしそう思っているなら、今すぐその認識をアップデートする必要があります。

アルバイトやパートであっても、条件を満たせば雇用保険への加入は「法律上の義務」です。特に「学生」や「掛け持ち(副業)」が絡むケースは判断を誤りやすく、無意識のうちにコンプライアンス違反を犯している企業が少なくありません。

さらに、2024年の法改正により、2028年10月からは加入対象が「週10時間以上」へと大幅に拡大されることが決定しています(学生の加入条件は現行通りとなる見込みです)。

本記事では、採用担当者が押さえておくべき最新の加入条件から、実務で迷いやすいグレーゾーンの判断基準、具体的な手続き方法までを網羅的に解説します。

目次

1. 雇用保険加入の「2つの必須要件」と2028年の転換点

雇用形態(パート・アルバイト・契約社員など)や名称にかかわらず、以下の2つの要件を両方満たす場合、事業主は必ず加入手続きを行わなければなりません。

(1) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

ここで重要なのは「実労働時間」ではなく、「雇用契約書(労働条件通知書)で定めた時間」である点です。

  • 週4日 × 1日5時間 = 週20時間:加入対象

  • 週3日 × 1日6時間 = 週18時間:対象外

【重要:2028年改正へのカウントダウン】

2028年(令和10年)10月1日より、この基準が「週10時間以上」に引き下げられます。現在「対象外」としている短時間スタッフの多くが数年後には加入対象となるため、今から労働コストのシミュレーションを行っておく必要があります。

(2)31日以上引き続き雇用される見込みがあること

採用時点で「1カ月以上雇うつもりがあるか」が基準です。

  • 期間の定めなし:対象

  • 契約期間が31日以上:対象

  • 契約更新の可能性がある:たとえ初回契約が30日以内でも、更新規定があれば対象

途中から雇用保険加入の条件を満たした場合はどうする?

採用当初は「週15時間」の契約だったアルバイトスタッフが、戦力化して「週25時間」働くことになった場合は週20時間以上を超えていますので、必ず雇用契約書(労働条件通知書)を結び直してください。

口頭で「来月からもっと入っていいよ」と伝えるだけでなく、書面で所定労働時間を週20時間以上に変更し、その変更日が「雇用保険の資格取得日」となります。この手続きを怠ると、万が一退職する際に「失業手当がもらえない」というトラブルに発展します。
また「繁忙期だけ一時的に週20時間を超える」という場合は加入不要です。

2. 【ケース別】判断に迷う「学生アルバイト」の境界線

学生は「学業が本分」であるため、原則として雇用保険の適用除外ですが、「学生=全員不要」と覚えるのは大変危険です。

原則:昼間学生は「適用除外」

大学、高校、専修学校などの「昼間学生」は、週20時間以上働いていても加入できません。

【加入が必要な「4つの例外」】

ケース 加入の要否 判断のポイント
夜間・通信制の学生 必要 夜間学部、定時制、通信制は「労働者」としての側面が強いとみなされます。
卒業見込み者 必要 内定者などが卒業前から勤務し、卒業後もそのまま継続雇用されることが確実な場合。
休学中の学生 必要 事実上、学業を行っていないため。復学した時点で「資格喪失」の手続きが必要です。
留学生(資格外活動) 原則不要 そもそも法的に週28時間以内という制限があるため、昼間学生扱いで不要なケースが大半です。

3. 「掛け持ち(ダブルワーク)」の複雑なルール

副業が当たり前になった今、最もトラブルが多いのがこの項目です。雇用保険には「二重加入できない」という鉄則があります。

どちらの会社で加入するか?

複数の職場で働く場合、労働時間を合算するのではなく、「主たる賃金を受ける雇用関係(メインの会社)」でのみ被保険者となります。

A社:週25時間 / B社:週15時間

→ A社でのみ加入します。

A社:週15時間 / B社:週15時間

→ 合計30時間ですが、どちらも20時間未満のため雇用保険には加入できません。
(※後述の特例を除く)

例外:マルチジョブホルダー制度(65歳以上)

65歳以上のシニア層に限り、2つの職場の時間を合算して20時間以上(各職場5時間以上)になれば、労働者本人の申し出により加入できる特例があります。1人で2社分の保険に入る(2社が保険料を負担する)ところが従来のルールと異なる点です。

【2026年時点の動向】

2028年の法改正に伴い、この「合算加入」の対象年齢制限を撤廃し、全世代のダブルワーカーが合算して加入できる仕組みの導入が議論されています。

4. 未加入放置は「時効なし」のリスクを孕む

「本人が入りたくないと言ったから」という理由は、行政には一切通用しません。

事業主への罰則

雇用保険法第83条により、届出を怠った事業主には「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。また、キャリアアップ助成金などの各種助成金が一切受けられなくなる経済的損失も無視できません。

労働者の不利益と「遡及加入」

未加入が発覚するのは、多くの場合「退職後」です。元従業員がハローワークへ行き、「失業手当がもらえない」と相談した時点で、調査が入ります。

  • 原則2年の遡及:過去2年分まで遡って保険料を支払い、加入させる必要があります。

  • 【要注意】2年を超える特例:給与から「雇用保険料」を天引きしていたにもかかわらず、手続きを忘れていた場合、2年を超えて(時効なしで)遡及加入させられるケースがあります。これは企業にとって巨額の追徴金リスクとなります。

5. 採用担当者が行うべき「実務フロー」と必要書類

トラブルを防ぐため、採用時には以下のフローを徹底しましょう。

ステップ1:他社での加入状況を確認

面接時に「現在、他で雇用保険に入っていますか?」と確認してください。二重加入エラーを防ぐためです。

ステップ2:必要書類の回収

  • マイナンバー
  • 雇用保険被保険者証(過去に加入歴がある場合)
    ※紛失している場合は、前職の社名を確認すればハローワークで照会可能です。

ステップ3:翌月10日までに届出

資格取得届を管轄のハローワークへ提出します。

【チェックポイント】

シフト制などで労働時間が月ごとに変動する場合、契約書に「週20時間以上」と明記されているか、実態として週平均20時間を超えているかを定期的に監査(セルフチェック)することが重要です。

まとめ:正しい知識が「会社の信頼」を守る

雇用保険は、従業員の失業だけでなく、育児休業給付やリスキリング(教育訓練給付)の原資となる重要なセーフティネットです。

  1. 「週20時間」と「31日見込み」を徹底チェック。

  2. 学生の例外(夜間・通信・休学)を見落とさない。

  3. 2028年の「週10時間」拡大に向け、現行のシフト構成を見直す。

  4. 未加入リスクを理解し、遡及加入は速やかに行う。

適切な労務管理は、採用ブランディングの第一歩です。

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Writer

ヒトキタ編集部 庵彩乃


Profile

札幌・函館・北見エリアの求人営業を経験後、現在は採用お役立ち記事の制作や自社メディア・イベントの販促、企業向けマーケティングを担当。