社員がこころの不調で休職…? 未然のメンタルヘルスケアで労災リスクを防ぐ

こころの不調

強いストレスや悩み、不安などによって心の健康が崩れ、日常生活に支障をきたす。
メンタルヘルス不調での休職者は、近年増加傾向にあります。「実はうちの職場でも...」と思った方もいるのではないでしょうか。
「メンタルヘルス不調」は、うつ病など特定の病気を指すものではなく、さまざまな症状や状態のことを表すため、適切なケアを行う上でまずは正しい認識が大切です。

そこで今回は、北海道産業保健総合支援センター(さんぽセンター)の保健師、鳴海志織さまに、労災リスクを防ぎつつ、採用活動にもポジティブにはたらく「メンタルヘルスケア」についてお話を伺いました。

メンタルヘルス不調とは?

はじめに、メンタルヘルスとは、こころの健康状態を意味します。心が晴れやかでエネルギーに満ちているなら、心はとても健康的だといえます。しかし、気持ちが落ち込むことやストレスを感じるのは誰にでもあること。それが長く続くとこころの健康状態が崩れてしまいます。

メンタルヘルスの不調について、厚生労働省「労働者の心の健康保持促進のための指針」では下記のように定義されています。

メンタルヘルス不調

精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの

つまり、メンタルヘルス不調は、うつ病などこころの病気として発症するものだけではなく、仕事、プライベート、人間関係によるストレスやプレッシャー、悩みなど、日常のさまざまな問題を含んでいます。

だからこそ、企業がメンタルヘルスケアに取り組むことは、従業員がこのような日常に潜む不調に陥るのを未然に防ぎ、もし不調が発生した場合でも適切に対応するために不可欠だといえます。
では、誰にでも起こりうるというメンタルヘルス不調は、どのくらい身近に迫っているのでしょうか?

メンタルヘルス不調を感じる労働者はおよそ7割

厚生労働省の労働安全衛生調査(実態調査)によると、令和6年度、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じると回答した労働者の割合は68.3%でした。日本で働く人のおよそ7割が、仕事や職場に悩みやストレスを持っているのです。

さらに、メンタルヘルス不調によって1か月以上休業あるいは退職した労働者がいる事業所は全国で12.8%に上りました。8つ事業所があれば1箇所ではメンタルヘルス不調から休業や退職につながっているという割合です。

こういった流れを受けて厚生労働省の検討会では、これまで50名以上雇用する職場に義務付けられていたストレスチェックを、令和10年度には50名未満の小規模事業所にも拡大する方針を決定しました。将来的にはすべての職場でストレスチェックが義務化される見通しです。

ストレスチェック

ストレスに関する質問表に労働者が記入し、自分のストレスがどのような状態にあるかを調べる簡単な検査。
労働者が自分のストレス状態を知り、ストレスをためすぎないよう対処をしたり、職場が要因で過度なストレスがあるなら医師に助言をもらったり、企業が措置を行ったり職場の改善につなげることでメンタル不調を未然に防止する仕組み。

メンタルヘルス不調は、さまざまな状況で起こりうるものですが、これを業務による強い心理的負荷が原因で発症した場合、労災(労働災害)として認定されることがあります。

さんぽセンター鳴海さま

北海道内でも精神障害の労災請求が年々増加しています。北海道労働局の過労死等の労災補償状況によると、令和6年度は118件と、前年度と比較すると7件は減少したものの100件を超える請求があり、45件が業務上の労災と認定されました。従業員がメンタルヘルスに不調をきたすと所属部門への負担も大きくなり、対応する上司や同僚など連鎖的に不調者が発生する場合もあります。

何から取り組む?従業員のメンタルヘルスケア

従業員のメンタルヘルス不調の未然防止のために企業ができる取り組みには、先述のストレスチェックと、これからご紹介する4つのケアがあります。厚生労働省では、職場のメンタルヘルスケアを効率的に進めるために、必要なケアを4種類に分けています。

厚生労働省が推進する4つのケア

1.労働者によるセルフケア
・ケアを行う人:労働者
・何をする?:自らストレスに気づき、予防対処し、事業者がそれを支援する。
(例)セルフチェック、休息・睡眠、旅行のような趣味、ストレッチなどリラクゼーション。

2.管理監督者によるラインケア
・ケアを行う人:労働条件の決定・労務管理で経営者と一体的立場の従業員(店長・課長等)
・何をする?:日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行う。
(例)遅刻・早退・欠席が増えた、ミスや自己が目立つなど「いつもと違う部下の様子」を把握する。そのような部下がいる場合は、話を聞いたり、必要に応じて産業医などへの相談や受診を促す。復職者の気持ちを受け止め、職場復帰への支援をする。

3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
・ケアを行う人:産業医、保健師や人事労務管理スタッフ
・何をする?:労働者や管理監督者等の支援、メンタルヘルス対策の企画立案を行う。
(例)課長職や部長職の担当が、外部専門家から現場の従業員ケアについて研修を受けたり知識を習得する。

4.事業場外資源によるケア
・ケアを行う人:管理監督者及び人事労務管理スタッフ
・何をする?:会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、その支援を受ける。
(例)会社で紹介し、従業員がクリニックの医師の診察を受けられるよう計らう。

(参考:厚生労働省のガイドライン「職場における心の健康づくり」PDF)

さんぽセンター鳴海さま

ストレスチェックによる状況の把握で終わらず、管理監督者によるラインケアなど、職場環境改善を行うことは重要です。これまで多くの企業にかかわってきた中で、メンタルヘルス不調が少ない職場に共通するのは、些細なことでも相談しやすい雰囲気があることだと思っています。またそのような職場は物理的環境やハラスメント対策などの社内体制も整っていると感じます。

職場のメンタルヘルスケアは採用活動にも好影響!

メンタルヘルス不調があると、従業員はいつも通りのパフォーマンスを発揮できず、集中力がなくなったり、判断力が低下したり、遅刻や欠勤が増えたり、事故のリスクが高まることもあります。こうなってしまうと労働生産性の低下は免れません。従業員が療養のために休職を希望したとしても、社内体制が整っていなければ円滑な復職につながらず、そのまま退職というケースもあり得るでしょう。人手不足が慢性化している現状では大きな痛手です。

それだけに、日ごろから未然のメンタルヘルスケアを行うことで、生産性の向上や休職・離職の防止、労災や訴訟リスク、企業イメージの低下など、経営上のリスクを低減したいところです。

また、これらのケアによって整えられた働きやすい職場環境は、求職者にとっても魅力的であり、企業価値の向上も期待できます。安心感が増すことで従業員の定着も良くなり、職場へのエンゲージメントも高まるでしょう。積極的にメンタルヘルスケアに取り組む結果として、離職率低下・定着率向上することは採用活動にも好影響を与えるといえます。

北海道産業保健総合支援センター
産業医学やメンタルヘルス、労働衛生工学などの専門スタッフが、社内のメンタルヘルス体制を整えるための支援や、若年者・管理監督者向け研修、ストレスチェック制度の導入支援などを無料で行っています。
(診療、カウンセリング等は行えません。)

https://www.hokkaidos.johas.go.jp/consultation/

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Writer

ヒトキタ編集部 庵 彩乃


Profile

札幌・函館・北見エリアの求人営業を経験後、現在は採用お役立ち記事の制作や自社メディア・イベントの販促、企業向けマーケティングを担当。