
十勝・本別町で127年続く農家の4代目として、農業の新たな価値づくりに挑み続ける前田茂雄さん。アメリカ留学で大規模農業を学ぶも、厳しい現実に直面したことをきっかけに、食文化や商品開発まで見据えた農業へと舵を切りました。独自の商品開発を進めるとともに、働きやすい環境づくりや人材育成にも力を入れる前田さん。今回は、その取り組みについて伺いました。
作るだけで終わらせない。十勝に根付く食文化を目指して
十勝・本別町で127年続く農家に生まれた前田さんは、東京農業大学卒業後にアメリカへ留学。北海道と気候が似ているアイオワ州立大学で学び、2000年に帰国。就農した当初はアメリカの大規模農業に影響を受け「規模拡大こそが正解」と考えていましたが、農地を広げるほど管理すべき課題も増え、理想と現実の違いに直面しました。
転機は、2009年。父から「お前が会社の方針を決めるんだ」と言われ、自分自身の農業を考えるようになりました。その中で、可能性を感じたのがパン用小麦。2004年頃から「春よ恋」の生産にも取り組んでいた時、同じ十勝に本店を構える「満寿屋商店 ますやパン」の杉山雅則社長からかけられた「北海道十勝のパン用小麦で食文化を作りましょう」という言葉が、心に残っていました。
「食文化は、1年や2年でできるものじゃない。10年、20年かけて育てていくものなんです。その言葉が農業を続ける覚悟にもつながりました」
現在は小麦の製粉や商品開発にも取り組み、生産者とパン職人が交流する「北海道小麦キャンプ」も開催。道産小麦の普及拡大に尽力しています。
通年雇用の実現と働きやすさの向上。人が定着する農業の形へ

長らく課題となっていた冬期雇用を解決するため、2013年からは電子レンジ専用ポップコーンの栽培にも挑戦。試行錯誤を重ね、寒冷地向け技法を開発し、3年かけて「北海道十勝ポップコーン」を誕生させました。
現在のスタッフは13人。地元のほか、東京やミャンマー出身のスタッフも働いています。前田さんが大切にしているのは、「人を活かす経営」。より良い職場環境づくりに向けて、農業者向けのトヨタ生産方式を取り入れ、業務改善やデジタル活用を推進。夕礼では翌日の作業を見通し、スタッフ同士で課題や気づきを共有しています。
また、月に1度は「モヤモヤ会議」も実施。業務外の困りごとを相談する会議で、掃除などの小さな不満の一つひとつを拾い上げて解決することで働きやすい環境を整えています。さらに、他の農業法人4社と合同でスタッフ交流会や若手農業者の海外研修支援を開くなど、会社の枠を超えた人材育成にも取り組んでいます。
「農業を持続するためには、作り手も大切にしないといけません。スタッフが安心して働ける環境を整えて、『農業は楽しい』と思える会社にしていきたいです」
BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!
Writer
ヒトキタ編集部 小林 陽可
Profile
求人営業部での法人営業を経験した後、WEB記事のライティングや自治体への移住施策企画のディレクション等に従事。現在は広報業務・営業支援を行う。