
特定技能1号の在留資格で働く外国人が、制度開始から数年を経て「5年の上限」に達し始めています。現場の主力として活躍する彼らが、5年満了後に原則として帰国または他の在留資格への移行等が必要となるのか、それとも継続雇用の道があるのかは、企業にとって重要な人事課題です。
結論から言えば、特定技能1号の5年満了が必ずしも原則として帰国または他の在留資格への移行等を意味するわけではありません。
在留者数が約39万人(2025年12月末時点)まで拡大している特定技能制度ですが、2025年9月30日に施行された「5年の壁」を緩和する制度改正、および第38回介護福祉士国家試験(2026年1月実施)から導入されたパート合格制度に対応して運用が開始された緩和措置により、5年を超えて日本で働き続けるための選択肢が広がっています。
この記事では、特定技能1号の「通算5年」の正確な数え方から、2号移行の現実、そして現在運用されている延長・除外措置の詳細まで、人事担当者が取るべき実務上の対応を徹底解説します。
※本記事は、2026年6月現在の法令・運用要領および公表資料等に基づいて執筆しています。今後の制度運用や法改正に伴い、要件や手続きの詳細が変更される可能性があるため、実務にあたっては出入国在留管理庁等の最新情報をご確認ください。
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目次
- 特定技能1号の5年が満了したらどうなる?
5年満了後の選択肢:比較表 - 特定技能2号に移行するには?
全16分野のうち「11分野」で2号移行が可能に
特定技能2号へ移行するための要件とステップ - 帰国した場合、再び特定技能1号で働けるか
- 2025年改正で「5年の壁」はどう緩和されたか
- 意外と知らない「通算5年」の正確な数え方
- 5年後を見据えて企業が今から始めるべきこと
2号移行に向けたキャリア設計と支援
在留期間の管理と申請スケジュール - まとめ
特定技能1号の5年が満了したらどうなる?
特定技能1号の在留期間は、入管法令等に基づき、通算で最大5年とされています。しかし、この期間を終えた後も、適切な手続きを踏むことで日本に滞在・就労を継続できる可能性があります。
5年満了後の主な方向性は、以下の3つに大別されます。
5年満了後の選択肢:比較表
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項目 |
特定技能2号への移行 |
他の在留資格への変更 |
帰国 |
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主な要件 |
分野ごとの2号試験合格+実務経験 |
学歴(大卒等)や一定の実務経験、または国家資格等 |
特になし |
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在留期間 |
上限なし(更新あり) |
上限なし(更新あり) |
特定技能1号としての在留終了(新たな在留資格を取得した場合を除く) |
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メリット |
家族帯同(配偶者と子)が可能、長期雇用が可能 |
高度な専門職としてキャリアアップ |
母国での経験活用 |
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ハードル |
試験の難易度が高い、実務経験証明 |
業務内容と学歴の整合性 |
人材流出による損失 |
さらに、一定の条件を満たす試験不合格者等への救済措置(最長6年への延長)や、産休・育休・病欠期間を通算カウントから除外する措置が現在運用されているため、企業は早い段階からこれらの選択肢を検討・準備する必要があります。
特定技能2号へ移行するには?
特定技能2号は、1号と比較して「在留期間の上限がない」「家族(配偶者と子)の帯同が認められる」という、制度上の特徴を持っており、「2号として長期で働き続けてほしい」と望む企業も多いでしょう。では、どうすれば2号へと移行できるのでしょうか。ここでは、2号へ移行するための要件をまとめました。
全16分野のうち「11分野」で2号移行が可能に
特定技能1号には全16分野が存在しますが、そのうち特定技能2号の受け入れ対象となっているのは以下の11分野です。
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特定技能2号の対象11分野: ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
一方で、1号の対象分野のうち、「介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業」の5分野については特定技能2号の対象外となっています。
ただし、介護分野については特定技能2号が設定されていない代わりに、国家資格「介護福祉士」を取得することで専門職としての在留資格「介護」への移行ルートがあります。
また、その他の対象外4分野についても今後見直される可能性があるため、今後の動向に留意が必要です。
特定技能2号へ移行するための要件とステップ
2号移行への制度はあるものの、2号の在留者数は1号に比べて依然として少数です。しかし、近年の試験体制の整備や制度の周知により移行者数は増加傾向にあります。
1号から2号へ移行するためには、大きく分けて以下2つの法的要件を満たした上で、在留資格変更許可の手続きを進める必要があります。
【満たすべき2つの法的要件】
1.分野ごとの技能試験(または指定 of 国家資格・検定)への合格
各分野が指定する「特定技能2号評価試験」に合格する必要があります(※建設分野における2級建設機械施工技能士・2級建築施工管理技士などの技能検定や国家資格でも代替可能です)。熟練した技能が求められるため、1号試験よりも難易度は上がります。
※日本語要件について:2号への移行にあたり、追加の日本語能力試験(N2やN3など)の合格は要件とされません。2号技能試験自体が日本語で実施されることや、後述する実務経験において必要な意思疎通能力が担保されているとみなされるためです。
一定の実務経験(指導・監督的立場)の証明
単に指示に従って作業する一般作業員ではなく、現場の「班長」や「リーダー」としての監督者・指導的な実務経験などが求められます。必要とされる経験年数や証明書類は分野ごとに異なりますが、企業側による計画的な管理業務の登用・履歴証明が不可欠です。
※他社からの転職者を移行させる場合の注意点:自社だけでなく他社での実務経験を合算して要件を満たす場合、前職の所属機関(企業)から指定様式の実務経験証明書を発行してもらう必要があります。前職との関係性によっては書類の取得が難航し、申請が頓挫する実務上のトラブルが多発しているため、採用・計画時には早期の確認が不可欠です。
特定技能2号移行以外にも、他の在留資格(技人国・介護・配偶者ビザ)などに変更して、在留を継続するケースもあります。
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「技術・人文知識・国際業務(技人国)」:大学・短大・専門学校(日本の専門学校の場合は専門士の取得が必要)の卒業資格や、10年以上の実務経験がある場合、変更可能です。ただし、「技術・人文知識・国際業務」は専門的・技術的業務が対象であり、現場作業を主たる業務とする場合は許可されにくい傾向があります。職務内容と学歴・職歴の整合性が厳しく審査されます。
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「介護」:介護分野の場合、国家試験である「介護福祉士」を取得すれば、在留資格「介護」へ変更でき、在留上限がなくなります。
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「身分に基づくビザ」:日本人や永住者、定住者との婚姻による「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」への変更も、個人的事情により発生し得ます。
帰国した場合、再び特定技能1号で働けるか
「一度帰国してリセットすれば、また1号で5年働けるのでは?」という疑問を持つ担当者も少なくありませんが、原則としてこれは認められません。
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通算5年のルール:特定技能1号の在留期間は「通算」で計算されます。一度日本を出国して帰国しても、過去に日本で「特定技能1号」として在留・活動した期間はリセットされません。
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原則再入国の不可:原則として、通算在留期間5年に達した後は、再度特定技能1号として日本へ新規入国することは認められません。
※出国費用に関するルール:特定技能外国人が1号期間満了などで帰国する際、本人に帰国旅費(航空券代等)を立て替える十分な自己資金がない場合、入管法令や特定技能基準省令、運用要領等に基づき、受け入れ企業(特定技能所属機関)による帰国旅費の確保・負担が求められています。
2025年改正で「5年の壁」はどう緩和されたか
2025年9月30日の特定技能運用要領改正、および2026年の介護分野における緩和措置により、人手不足に対応するため、実務上の運用が大きく見直されました。
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措置名 |
法的効果と内容 |
実務上のメリット |
|---|---|---|
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在留期間「3年」の新設 |
1回あたりの付与期間に「3年」が追加 |
更新申請の負担軽減 |
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救済措置(最大6年延長) |
試験不合格者等に対し、一定の条件で最長1年(合計6年)の延長を容認 |
2号移行(または介護福祉士合格)試験に一定の条件を満たす試験不合格者の継続雇用 |
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通算除外措置 |
産休・育休・病欠期間を通算5年のカウントから除外 |
就労不可期間の補填によるキャリア継続の支援 |
※通算除外措置について
産前産後休業・育児休業については労働基準法、育児・介護休業法に基づく適法な休業期間、病気・怪我による休業については原則1年以下(労働災害による休業の場合は3年以下)の休業期間です。
※ただし、連続して1か月以上の休業である必要があります。数日間の病欠の合算や、断続的な通院による不就労は対象外です。
この措置は、自動適用はされません。在留資格の更新申請時に、休業の事実を証明する客観的な疎明資料(母子手帳の写し、医師の診断書、休業証明書など)を添付し、入管へ「通算在留期間に関する申立書」を提出しましょう。
企業担当者は「いつからいつまで休業していたか(休業の開始日・終了日)」を正確に記録・管理し、満了日が法的に何日ズレるのかを正確に把握してくことが肝心です。
意外と知らない「通算5年」の正確な数え方
実務上、在留資格の期間算定を間違えると、在留資格に関する法令違反や不法就労助長罪などのリスクに繋がります。以下のルールを再確認しておきましょう。
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転職しても累積される:異なる企業・分野へ転職した場合でも、特定技能1号として滞在した全期間が合算されます。採用時には、前職での在留カードと当時の在留期間履歴(過去の在留カードの写しやパスポート等)を漏れなく確認する必要があります。
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一時帰国中もカウントされる:「有給休暇や年末年始で1か月間母国へ一時帰国していた」という期間も、日本に在留資格(特定技能1号)を有している状態であるため、原則として通算5年のカウントに含まれます。「一時帰国したからその分、日本に滞在できる期間が延びる」ということはありません。
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起算日は「最初に特定技能1号の在留資格を取得した日」:雇用契約の開始日や物理的な在留カード受取日ではなく、在留資格の効力が生じた日(上陸許可日、または在留資格変更許可日など制度上の在留開始日)がカウントの起算点になります。
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特例期間の扱い:在留期間の更新手続き中に発生する「特例期間(満了後最大2か月)」についても、実際の活動状況等に応じて通算期間へ算入される場合があります。
5年後を見据えて企業が今から始めるべきこと
満了直前に準備を始めても、試験回数の少なさや結果発表までのタイムラグ、要件確認の遅れなどにより、帰国を余儀なくされるケースが発生しています。
2号移行に向けたキャリア設計と支援
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入社初期〜3年目:基礎的な技能の定着と、例として日本語能力試験(N3〜N2レベル)の合格を目指した学習サポート。
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3年目〜4年目:2号試験の要件である実務経験を積ませるため、実際に現場でのリーダー的役割の付与など、分野ごとに必要とされる業務配置計画を実行する。
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4年目〜5年目:2号試験の教材提供、模擬試験の実施、実技指導など、企業内での明確な試験対策支援を実施する。
在留期間の管理と申請スケジュール
在留期間の管理は、全外国人スタッフの「正確な特定技能1号の満了日(通算算入日)」を一元管理するとよいでしょう。
「在留カード」に記載されている在留期間と、パスポートの証印(スタンプ)、および前職がある場合は「過去の在留カードの写しやパスポート等」を照合して、正確な通算期間を割り出します。
満了までのカウントダウンタスク
【在留期間満了 6か月前】
◆ 今後のキャリアプラン(2号移行・他資格・帰国)について面談と意思確認
◆ 2号試験のスケジュールを確認し、出願を行う
◆ 本人に2号試験(または介護福祉士試験)の合格状況を確認
【在留期間満了 3か月前】
◆ 2号移行手続き、または2025年改正に基づく「最長6年(1年延長)」の救済措置申請を準備
◆ 休業除外(産休・育休・病欠)がある場合は、診断書や母子手帳などの疎明資料を収集
◆ 入管へ「通算在留期間に関する申立書」を添えて在留期間更新許可申請を提出
【在留期間満了 1か月前】
◆ 申請審査状況の確認
◆ 万が一、不合格延長や移行の許可が下りなかった場合を想定し、帰国手配(航空券の手配や帰国手続きの確認)を実施
北海道で採用一筋50年以上の北海道アルバイト情報社が提供する「特定技能支援サービス」についてご紹介します。
まとめ
特定技能1号の5年満了は、決して「雇用の終わり」ではありません。
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特定技能2号への移行(上限なし、家族帯同が可能な長期雇用のメインルート)
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他の在留資格(技人国、介護、身分系等)への変更
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不合格者・休業取得者への救済延長措置(不合格でも8割以上の得点等で最大6年まで延長、また産休等のカウント除外)
これら3つの選択肢を正しく法的に理解し、企業と外国人が協力して準備を進めることが、優秀な即戦力人材の流出を防ぐための重要な手段です。
まずは、「自社に在籍している外国人が、本日時点で通算何年何ヶ月在留しているか」を管理台帳で正確に把握することから始めましょう。適切な法令遵守(コンプライアンス)のもとで、長期的な人材定着を実現していきましょう。
Writer
ヒトキタ編集部 小林 陽可
Profile
求人営業部での法人営業を経験した後、WEB記事のライティングや自治体への移住施策企画のディレクション等に従事。現在は広報業務・営業支援を行う。