技能実習生から特定技能への移行はできる?移行条件と手続きの流れを解説

自社で活躍している技能実習生の在留期限が近づき、「このまま特定技能へ移行して、長く働いてもらえないだろうか」と悩まれていませんか。

技能実習生から特定技能への移行は可能で、技能実習2号を「良好に修了」していれば、技能試験・日本語試験の両方が免除され、在留資格の変更申請によって「特定技能1号」へスムーズに移行することができます。

そもそも「技能実習」は、開発途上国への技能移転を目的とした制度であり、在留期間は最長5年と定められています。一方、「特定技能」は日本の深刻な人手不足分野において即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。特定技能1号は最長5年、さらに特定技能2号へ移行できれば更新上限なしで日本に在留できるようになります。

出入国在留管理庁のデータによると、2025年12月末時点で特定技能の在留外国人数は約39万人に達しており、その6割以上が技能実習からの移行者で占められています(※1)。多くの企業が、すでに自社で育成した人材を特定技能へ切り替え、長期的な戦力として雇用を継続しています。

本記事では、人事担当者の方が「自社の実習生が移行できるか」を正確に判断し、トラブルなく手続きを進められるよう、移行条件、必要書類、メリットや注意点を徹底解説します。

※1 出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」のデータより引用

目次

特定技能への移行条件と対象分野

技能実習生を特定技能へ移行させるための大前提として、「技能実習2号の良好修了」という条件を満たす必要があります。この条件をクリアすることで、特定技能1号への移行時に課される試験が免除されるため、企業側にとっても外国人本人にとっても非常に大きなメリットとなります。

まずは、試験免除となる具体的な要件と、自社の職種が特定技能のどの分野に該当するのかを確認していきましょう。

技能実習2号の良好修了による試験免除

特定技能1号を取得するためには、原則として「技能試験」と「日本語試験」の両方に合格しなければなりません。しかし、技能実習生が最大の恩恵を受けられるのが、この試験免除の仕組みです。

「技能実習2号を良好に修了」した者は、同一の業務分野への移行であれば、これら2つの試験が完全に免除されます。では、「良好に修了」とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。実務上、以下の2つのルートのいずれかを満たす必要があります。

  • 試験合格ルート:技能実習を2年10カ月以上修了し、かつ「技能検定3級」またはこれに相当する「専門級実技試験」に合格していること。
  • 評価調書ルート:仮に技能検定3級の試験に不合格であった場合でも、実習実施者(受入企業)が作成する「技能実習評価調書」によって、出勤状況や技能の修得状況が良好であると認定されること。

つまり、検定試験に落ちてしまった実習生であっても、企業側が日々の真面目な勤務態度や確かな技術の習得を評価し、調書を適切に作成・提出すれば、試験免除で特定技能への移行が可能になります。

ただし注意点として、試験免除となるのは「技能実習と同じ分野(同一分野)」へ移行する場合に限られます。もし技能実習とは全く異なる異分野の特定技能へ移行したい場合は、日本語試験は免除されるものの、移行先分野の「技能試験」を受験し、合格する必要があります。

移行可能な16分野と職種の対応関係

特定技能制度は、国内で特に人手不足が深刻な特定の産業分野に限定して受け入れが認められています。2024年の閣議決定による対象拡大・再編を経て、特定技能は現在16分野となっています。 自社で受け入れている技能実習の職種が、特定技能のどの分野に該当するのかを以下の表で確認してください。

 特定技能分野 技能実習の主な対応職種(例)
 介護 介護
ビルクリーニング
ビルクリーニング

工業製品製造業(※旧 製造3分野を統合・拡充)

鋳造、機械加工、金属プレス、溶接、プラスチック成形、紡織製品製造、衣服・その他の繊維製品製造、印刷・同関連業など

建設
型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ/表装、とび、建築板金、吹付ウレタン断熱など
造船・舶用工業
溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て
自動車整備 自動車整備
航空
航空機地上支援、航空機整備
宿泊

宿泊(接客、衛生管理、フロント、企画・広報など)

農業
耕種農業、畜産農業
漁業
漁船漁業、養殖業
飲食料品製造業
食品製造関連(缶詰巻締、食鳥処理加工業、加熱性水産加工食品製造業、非加熱性水産加工食品製造業、水産練り製品製造、牛豚食肉処理加工業、ハム・ソーセージ・ベーコン製造、パン製造、そう菜製造業、農産物漬物製造業、医療・福祉施設給食製造など)
外食業
飲食物調理、接客・飲食物給仕、店舗管理運営の一部
自動車運送業(2024年新設)
対応する技能実習職種なし
鉄道(2024年新設)
対応する技能実習職種なし
林業(2024年新設) 林業
木材産業(2024年新設)
木材加工、家具製作

ここで人事担当者が注意すべき重要なポイントがあります。かつては「繊維・衣服関係(縫製など)」や「宿泊」などの職種は特定技能への移行ルートが限られていましたが、近年の制度改正によって分野が新設・拡充され、現在では非常に多くの職種から同一分野の特定技能へ試験免除で移行できるようになりました。

ただし、一部の技能実習職種(例:非破壊検査など)のように、対応する特定技能の分野が依然として存在しないケースもあります。自社の職種が完全に一致しているか、最新の「移行対象職種対応表(出入国在留管理庁)」を必ず事前に確認しましょう。

移行手続きの流れと必要書類

移行条件を満たしていることが確認できたら、次は具体的な手続きに進みます。

在留資格変更許可申請は、準備から許可が下りるまでに相応の時間がかかります。審査期間だけでも2〜3カ月を要することが多いため、現在の在留期限の少なくとも3カ月前には書類準備を開始するというスケジュール感を必ず持ってください。ギリギリになって焦ることがないよう、全体の流れを把握しておきましょう。

在留資格変更申請の流れとスケジュール

技能実習から特定技能への移行は、単に書類を提出すれば終わるものではありません。事前の契約や計画策定が重要になります。全体の大まかな流れは以下の通りです。

1.雇用契約と支援計画の策定

移行手続きの起点は、外国人本人との「特定技能雇用契約の締結」と、「1号特定技能外国人支援計画の策定」です。これらは申請書類を作成する前に行う必要があります。

特定技能制度では、外国人に対して日常生活や職業生活上の支援を行うことが義務付けられています(事前ガイダンス、出入国時の送迎、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供など全10項目)。 この支援は自社で実施することも可能ですが、要件が厳しいため、国の登録を受けた「登録支援機関」に支援の全部を委託する選択肢も用意されています(義務ではなく選択制です)。

2.書類準備と申請

契約と支援計画が固まったら、申請に必要な書類を収集・作成します。企業側の財務状況や社会保険の加入状況を示す公的書類と、外国人本人の証明書類をすべて揃え、管轄の出入国在留管理局へ「在留資格変更許可申請」を提出します。

3.審査から許可まで

申請受理後、出入国在留管理局による審査が開始されます。標準的な審査期間は約1カ月〜2カ月とされていますが、混雑状況や追加書類の要請(資料提出通知)があれば3カ月程度かかることも珍しくありません。無事に審査を通過し「許可」の通知ハガキが届けば、新しい在留カードを受け取り、特定技能としての就労がスタートします。

企業側・本人側それぞれの必要書類

特定技能の申請書類は、技能実習の際と比較して企業側に求められる書類が多いのが特徴です。また、分野ごとに管轄省庁が定める追加書類が存在するため、出入国在留管理庁のウェブサイトで最新のチェックリストを確認することが不可欠です。 ここでは、原則として全分野共通で必要となる基本的な書類を整理します。

企業(所属機関)が準備する書類

  • 特定技能雇用契約書の写し(及び雇用条件書の写し)
  • 1号特定技能外国人支援計画書
  • 登記事項証明書(法人の場合)
  • 直近の決算書類(損益計算書・貸借対照表などの写し)
  • 納税証明書(法人税、消費税及び地方消費税、源泉所得税等)
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)、労働保険の加入状況を確認できる書類
  • 登録支援機関に支援を委託する場合は、支援委託契約書の写し

外国人本人が準備する書類

  • 在留資格変更許可申請書

  • 写真(縦4cm×横3cm、申請前3ヶ月以内に撮影したもの)

  • パスポート(旅券)の写し、または提示

  • 在留カードの写し、または提示

  • 履歴書

  • 技能実習評価調書(または技能検定3級等の合格証書の写し)※試験免除の証明として必須

  • 技能実習修了証明書(すでに修了している場合)

移行のメリットとコスト面の変化

経営層や上司に特定技能への移行を提案する際、「どのようなメリットがあり、コストはどう変わるのか」を論理的に説明する必要があります。移行にはポジティブな面が多い一方で、企業側が背負う責任やコスト構造の変化、リスクも存在します。客観的な視点で整理してみましょう。

即戦力人材を長期雇用できるメリット

最大のメリットは、「すでに自社の業務に習熟した人材を、そのまま即戦力として雇用継続できる」という点です。

新たに外国人を海外から採用する場合、面接のセッティング、送出し機関への手数料、入国までの待機時間(半年以上かかることもあります)、そして入国後の業務教育など、膨大な採用コストと教育コストが発生します。また、日本の生活や自社の企業文化に適応できるかというミスマッチのリスクも伴います。

 技能実習から移行する人材であれば、技術力や人柄はすでに把握済みであり、職場のルールにも馴染んでいます。教育コストをゼロに近い状態に抑えつつ、特定技能1号としてさらに最長5年間、事業に貢献してもらうことができます。

さらに、建設分野や製造業など多くの分野で「特定技能2号」への道が開かれています。2号へステップアップすれば、在留期間の上限はなくなり、家族の帯同も可能になるため、真の意味での「長期的な中核人材」としての活躍が期待できます。

賃金水準の上昇と転職自由化のリスク

一方で、コストとリスクの面も直視しなければなりません。

まず、賃金水準の変化です。特定技能制度には「日本人と同等以上の報酬を支払うこと」という厳格な法的要件があります。技能実習時代は最低賃金に近い水準で雇用していたケースでも、特定技能へ移行する際は、本人の経験やスキル(実習で培った約3年の経験)を正当に評価し、同程度の経験を持つ日本人従業員と同等の給与へと引き上げる必要があります。

また、管理にかかる外部費用も変化します。技能実習で毎月支払っていた「監理団体への監理費」は不要になりますが、支援業務を登録支援機関に委託する場合は、新たに「委託費用(月額2〜3万円程度/人が相場)」が発生します。自社で支援を行う場合でも、担当者の人件費という形で見えないコストがかかります。

そして最大のリスクが「転職の自由化」です。技能実習制度は原則として転籍が認められていませんでしたが、特定技能は同一の業務分野内であれば、日本人と同じように企業間を転職することが可能です。より高い給与や良い労働環境を求めて人材が流出するリスクがあるため、企業側は「選ばれ続ける会社」になる努力が不可欠です。適切な待遇改善や、キャリアパスの提示による定着率向上が人事の重要なミッションとなります。

北海道で特定技能人材が転職等により欠員が生じた場合、地域に根ざした求人媒体を活用することが補充の現実的な手段の一つです。正社員・契約社員向けのジョブキタなど、地域密着型の求人メディアは地元での採用活動に適しています。

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見落としやすい3つの注意点

条件を満たし、手続きの流れを理解していても、実務の現場では想定外のトラブルが発生することがあります。ここでは、多くの担当者が躓きやすい「3つの落とし穴」とその対処法を重要度順に解説します。

1. 申請が期限に間に合わない場合の特例措置(特定活動

「必要書類の準備や、分野ごとに義務付けられている『協議会』への入会手続きが遅れ、技能実習の在留期限までに特定技能の申請が間に合わない」というのは、実務で非常によく起こるトラブルです。

前提として、在留期限「内」に変更申請さえ済ませていれば、審査中に期限が切れても自動的に「特例期間(2カ月)」が適用され、結果が出るまでそのまま就労・滞在が可能です。しかし、申請そのものが期限に間に合わない場合は、期限が切れた時点で就労できなくなってしまいます。

このような場合の救済措置として、一定の要件を満たせば、特定技能への移行準備を目的とした「特定活動(4カ月・就労可)」という在留資格へ事前に変更する特例措置が存在します。

【特例措置の適用要件】

  • 特定技能1号への移行に向けた準備(協議会の手続きや書類作成)を行っていること
  • 技能実習2号を良好に修了していること
  • 受入機関(企業)が引き続き本人を雇用し、特定技能時と同等以上の報酬を支払うこと

この特例措置を利用すれば、特定技能の申請書類が揃うのを待つ間も、職場の戦力を切らすことなく就労を継続させることができます。「期限までに特定技能の申請が間に合わないから一度帰国させなければならない」と諦める前に、まずは管轄の入管や行政書士へ相談し、この特定活動への切り替え手続きを検討しましょう。

2. 分野・国ごとの上乗せ要件

出入国在留管理庁に提出する共通書類とは別に、分野ごとの管轄省庁や、外国人の出身国(送出し国)が独自に定めるルールが存在します。これを見落とすと申請が通らないため注意が必要です。

  • 分野別の上乗せ要件(例:建設分野): 建設分野では、国土交通省のルールにより、受入企業が「一般社団法人建設技能人材機構(JAC)」へ加入し、受入負担金を拠出することが義務付けられています。また、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」への企業登録と技能者登録も必須要件となっており、これらの登録には時間と追加コストがかかります。
  • 国別の要件(二国間協定): 日本政府はベトナム、フィリピン、ミャンマーなど複数の国と二国間協定を結んでいます。例えばフィリピンの場合、駐日フィリピン共和国大使館の海外労働事務所(MWO)を通じた手続きが必須です。また、国によっては本国政府からの「推薦状」や特別な承認手続きが求められるケースがあります。

自社の該当分野の協議会ルールと、該当国の大使館情報を申請前に必ず確認してください。

3. 一時帰国にともなう再入国リスク

技能実習を終え、特定技能へ移行するタイミングで「一度母国に帰って家族に会いたい」と希望する実習生は多くいます。一時帰国自体は可能ですが、タイミングと手続きを間違えると致命的なトラブルになります。

まず、在留資格変更申請の審査中に一時帰国することは推奨されません。出国した時点で申請が取り下げられたと見なされるリスクがあり、その場合は再度「在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる手続き)」からやり直すことになり、数カ月単位の空白期間が生じます。

また、帰国時に「脱退一時金(年金の払い戻し)」を請求してしまうケースにも要注意です。脱退一時金は「日本での就労を完全に終えて帰国する人」向けの制度です。これを受給してしまうと、日本での滞在歴がリセットされたと見なされ、特定技能での再入国に大きな支障をきたす、あるいは事実上雇用が終了してしまう恐れがあります。

一時帰国を認める場合は、必ず在留資格の変更が「許可」され、新しい在留カードを受け取った後にスケジュールを組むこと。そして出国時には必ず「みなし再入国許可」のチェックを入れて出国するよう、企業側から強く指導してください。

まとめ

技能実習生から特定技能への移行について、人事担当者が知っておくべきポイントを解説しました。

  • 技能実習2号の良好修了(2年10カ月+検定3級合格等)により、特定技能の試験は免除される
  • 申請書類の準備や支援計画の策定を含め、在留期限の3カ月前には準備を開始する
  • 即戦力を長期雇用できる反面、給与水準の引き上げと人材流出(転職)のリスク対策が必要
  • 在留期限が迫った場合の特例措置(特定活動)や、分野・国ごとの独自要件を見落とさない

政府の方針により、2027年までに新しく「育成就労制度」が施行され、現行の技能実習制度は発展的に解消されることが正式に決定しています。しかし、育成就労制度においても「特定技能1号への移行」が制度の最終的な出口として位置付けられていることに変わりはありません。

現在、自社で活躍している技能実習生を特定技能へスムーズに移行させるノウハウや体制構築は、将来の制度変更後もそのまま自社の強みとして活かすことができます。在留期限から逆算して、ぜひ早めの準備と移行手続きを進めてみてください。

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Writer

ヒトキタ編集部 友坂 智奈


Profile

法人営業や編集職を経て、広報を担当。現在は、SNSや自社サイトの運用をはじめ、イベントやメルマガを活用した販促・営業支援企画も手掛けている。