
「アルバイトやパートタイマーなら、社会保険には加入しなくてよい」と考えていませんか?
アルバイトであっても一定の労働時間や勤務条件を満たしている場合、法律によって企業には社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入手続きを行う義務が課せられています。
労働条件が基準に達しているにもかかわらず未加入のまま放置していると、企業側は重大な法令違反となり、遡及して保険料を徴収されるなどのペナルティ(リスク)を科されます。また、2024年10月の適用拡大に続き、2026年以降には社会保険の加入条件をさらに引き下げる極めて重要な法改正が予定されています。
この記事では、現在の加入義務基準(4分の3基準、短時間労働者の5条件)から、2026年以降に順次スタートする法改正の全容、企業側の人件費・法定福利費コストの目安や、採用活動における実務上の対応ポイントまで分かりやすく解説します。
厚生労働省委託事業により制作された【募集・採用の基礎知識】ハンドブックを無償でお渡ししています。
北海道内の企業・事業主様で、ご希望の方はお問い合わせいただき、ぜひご活用ください。
目次
-
アルバイトの社会保険加入義務が発生する2つの基準
1. フルタイムの4分の3以上働く場合(4分の3基準)
2. 短時間労働者の5つの加入条件(適用拡大基準) -
2026年以降の法改正による加入条件の変更点
1. 月額賃金要件(106万円の壁)の撤廃【2026年10月】
2. 企業規模要件の段階的撤廃【2027〜2035年】
3. 被扶養者の収入判定ルール変更(2026年4月施行) -
社会保険の適用拡大を「前向きな雇用戦略」に繋げる視点
単なるコスト増に終わらせない3つのアプローチ
法改正に伴う企業負担(法定福利費)のシミュレーション -
学生・掛け持ちなど実務で判断に迷うケース
1.学生アルバイトの適用判定と例外
2.掛け持ち(Wワーク)従業員の判定ルール -
企業側の実務対応と未加入リスク
1.加入手続きの流れと届出期限
2.未加入に対する従業員からの指摘と行政指導プロセス
3.未加入放置による甚大な企業リスク
アルバイトの社会保険加入義務が発生する2つの基準
2026年7月現在で、アルバイトやパートタイマーに社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務が発生するかどうかは、以下の「2つの基準」のいずれかに該当するかで判定します。
今後この基準が法改正により変わりますが、考え方及び数の数え方などが基礎となりますのでしっかり確認しておきましょう。

社会保険への加入ルートは、このように2段階で判定されます。
- 4分の3基準(原則基準):企業規模(従業員数)にかかわらず、フルタイムに近い働き方をしている場合に適用。
- 短時間労働者の5条件(適用拡大基準):4分の3基準を満たさない短時間労働者であっても、一定規模以上の企業で特定の条件をすべて満たした場合に適用。
なお、ここでいう「社会保険」とは「健康保険」と「厚生年金保険」を指します。
※「労災保険」は労働者であれば週1時間でも1日のみの勤務でも全員に自動適用され、「雇用保険」は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に加入義務が発生する別の制度です。それぞれ加入基準が異なるため混同しないよう注意しましょう。
また、短時間労働者の判定において極めて重要となる「従業員数」とは、単に在籍しているパートやアルバイトの「頭数」ではありません。原則として「現在の厚生年金保険の被保険者数(フルタイム労働者およびすでに社会保険に加入している短時間労働者の合計)」でカウントします。社会保険に加入していない短時間労働者はこのカウントに含まれません。
それぞれの詳細な条件について、以下でさらに詳しく見ていきましょう。
1. フルタイムの4分の3以上働く場合(4分の3基準)
「4分の3基準」とは、アルバイトやパート、契約社員といった雇用形態の名称にかかわらず、勤務時間・日数が正社員(フルタイム労働者)と比べて一定以上ある場合に、企業の規模を問わず一律で社会保険の加入義務が生じる基準です。
具体的には、以下の2つの条件を両方とも満たす必要があります。
- 1週の所定労働時間が、同一事業所の一般社員(フルタイム)の 4分の3以上であること
- 1月の所定労働日数が、同一事業所の一般社員(フルタイム)の 4分の3以上であること
<具体的な計算例>一般社員の労働条件が「週40時間・月20日勤務」の企業の場合
週の労働時間基準:40時間×3/4=30時間以上
月の労働日数基準:20日×3/4=15日以上
つまり、「週30時間以上」かつ「月15日以上」働くアルバイトスタッフであれば、その企業の総従業員数が1名であっても1,000名であっても、必ず社会保険への加入手続きを行わなければなりません。
2. 短時間労働者の5つの加入条件(適用拡大基準)
「4分の3基準」を満たさない場合であっても、以下の「5つの条件」をすべて満たす短時間労働者には、社会保険の加入義務が発生します。
これは「社会保険の適用拡大」と呼ばれる仕組みで、段階的に対象となる企業規模が引き下げられてきました。
| 加入条件項目 | 主な注意点・判定のポイント | |
|
1 |
従業員51人以上の企業に勤務していること | 法人単位(同一の法人番号)での「被保険者数」で判定。 |
| 2 | 週の所定労働時間が20時間以上であること | 契約上の時間。残業時間は原則として含まない。 |
| 3 | 月額賃金が88,000円以上であること | 基本給や諸手当など「所定内賃金」のみで判定。 |
| 4 | 雇用期間が2カ月を超える見込みがあること | 当初の契約期間が2カ月以内でも、更新の可能性があれば対象。 |
| 5 | 学生でないこと | 大学、高校、専門学校等の在学生は原則として対象外。 |
それぞれの条件について、実務上迷いやすいポイントを整理します。
従業員51人以上の企業に勤務していること
企業規模の判定基準となる「従業員数」は、企業全体の「厚生年金被保険者の総数」です。 支店や店舗ごとの人数ではなく、同一の法人番号を持つ法人全体の合計人数でカウントします。
※現在(2026年7月時点)、この基準は「51人以上」となっていますが、後述の通り今後の法改正でさらに段階的に引き下げられることが決定しています。
所定労働時間が週20時間以上であること
雇用契約書や労働条件通知書に記載されている「契約上の労働時間」が週20時間以上であることが基準です。 臨時に発生した残業時間は含みませんが、契約上は週18時間であっても、実労働時間が常態的に(連続する3カ月などで)週20時間以上となり、今後もその状態が続くと見込まれる場合は、実際の労働時間に基づいて加入判定を行います。
月額賃金が88,000円以上であること
この「月額88,000円」は年収に換算すると約106万円になるため、俗に「106万円の壁」と呼ばれています。 月額賃金の判定は「週給」や「日給」ではなく「月給」ベース、時給制の場合は「契約上の時給×週の所定労働時間×52週÷12カ月」などで算出します。
なお、月額賃金に含まれるのは基本給や各種手当(役職手当、資格手当など)といった「所定内賃金」のみです。以下の手当や賃金は除外して計算します。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与・ボーナスなど)
- 時間外労働、休日労働、深夜労働に対して支払われる手当(残業代など)
- 通勤手当(交通費)、家族手当、精皆勤手当
雇用期間が2カ月を超える見込みがあること
「2カ月以内の期間を定めて雇用される人」であっても、以下のようなケースでは「2カ月を超える雇用の見込みがある」と判断され、初日から社会保険の加入対象となります。
- 雇用契約書に「契約更新の条項がある」または「更新する場合がある」と明記されている場合
- 同様の契約で雇用されている他のアルバイトが、実際に2カ月を超えて更新されている実績がある場合
学生でないこと
学校教育法に規定される大学、大学院、短期大学、専修学校、各種学校、高等学校などの学生・生徒は、学業が本分とされるため短時間労働者の社会保険加入の適用対象から除外されます。ただし、これにはいくつかの例外があります(詳細はこちら)。
2026年以降の法改正による加入条件の変更点
我が国では少子高齢化に伴う労働力不足や、働き方に中立的な社会保障制度の構築を目指し、社会保険の適用拡大を推進しています。
昨年2025年6月に成立した「年金制度改正法」(正式名称:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)に基づき、2026年以降、アルバイトの社会保険加入条件が劇的に変更されます。
法改正の主なポイントは以下の3点です。施行時期と内容を正確に把握しておきましょう。

1. 月額賃金要件(106万円の壁)の撤廃【2026年10月】
2026年10月より、短時間労働者の適用条件の1つであった「月額88,000円以上(年収約106万円の壁)」という賃金要件が完全に撤廃されます。
- 変更前:週20時間以上働いていても、月額賃金が88,000円未満であれば加入対象外。
- 変更後:月額賃金の多寡にかかわらず、「週20時間以上」働いていれば自動的に社会保険の加入対象となる。
この改正に伴い、今後は「週20時間以上働くかどうか」が、企業が社会保険に加入させなければならない実質的なボーダーラインとなります。 「扶養内での勤務」を強く希望するスタッフを雇用している場合、週20時間未満に抑えるための厳密なシフト調整や配置の見直しが急務となります。
2. 企業規模要件の段階的撤廃【2027〜2035年】
現在「従業員51人以上」の企業にのみ適用されている短時間労働者の社会保険適用ルールですが、2027年10月以降、企業規模の要件が段階的に引き下げられ、最終的には「従業員数に関係なくすべての企業(個人事業主を含む)」に適用拡大されます。
具体的なスケジュールは以下の通りです。
|
施行時期 |
対象となる企業規模(厚生年金被保険者数) |
|
|
1 |
現在(2026年7月時点) |
従業員数51人以上の企業 |
| 2 |
2027年10月~ |
従業員数36人以上の企業へ拡大(35人超の事業所) |
| 3 |
2029年10月~ |
従業員数21人以上の企業へ拡大(20人超の事業所) |
| 4 | 2032年10月〜 | 従業員数11人以上の企業へ拡大(10人超の事業所) |
| 5 | 2035年10月〜 | すべての企業(従業員数不問・1人から適用) |
このように、2035年には小規模店舗や個人クリニック等であっても、「週20時間以上」働くアルバイト全員の社会保険に加入が義務となります。中長期的な法定福利費の増加を見越した、経営計画や採用・人員配置の再設計が必要です。
3. 被扶養者の収入判定ルール変更(2026年4月施行)
2026年4月1日より、従業員が「家族の扶養内」で働くかどうかの判断基準となる収入判定方法が新しくなりました。
- 旧ルール:直近3カ月間の実績収入をベースに、将来1年間の見込み年収が130万円(または106万円)未満かを判定。
- 新ルール(2026年4月~):原則として「労働条件通知書(雇用契約書)」に記載された契約上の基本給・手当に基づく「見込み年収」で一元的に判定。
従来のルールでは、繁忙期に一時的な残業や他店応援などで直近3カ月の給料が高くなると、契約変更をしていないにもかかわらず「年間換算で130万円を超える」とみなされ、扶養から外れてしまうリスクがありました。
新ルール移行後は、契約上の労働時間や基本給が扶養内(例:週15時間勤務など)で設計されていれば、突発的なシフト応援や繁忙期の残業などにより一時的に実労働時間・月給が増加しても、労働条件通知書の契約内容に恒久的な変更がない限り、扶養から外れるリスクがなくなりました。 企業側にとっては、「急なシフトの穴埋め」などをアルバイトに依頼しやすくなる実務上の大きなプラス要因となります。
なお、19~23歳の被扶養者の収入基準額は150万円未満(2025年10月施行済)、60歳以上や障害者は180万円未満が基準となっています。
社会保険の適用拡大を「前向きな雇用戦略」に繋げる視点
社会保険の適用拡大は、企業にとって法定福利費(保険料の会社負担分)の増加という「コスト増」の側面ばかりが注目されがちです。しかし、法律上の義務を逆手に取り、「優秀な人材を惹きつけ、定着させるための前向きな雇用戦略」として再設計するチャンスでもあります。
単なるコスト増に終わらせない3つのアプローチ
- 「しっかり稼ぎたい」意欲的なレギュラー層の獲得:法的な要件を満たした適正な社会保険の加入体制は、求職者に「コンプライアンスが遵守された、安心して働ける健全な企業」であるという強力な証明(信頼)を与えます。「扶養を外れてもしっかり働き、キャリアを積みたい」と考える優秀な求職者を惹きつける基盤になります。
- 従業員の安心感による定着率の向上:社会保険に加入することで、従業員は「厚生年金の受給額増」や「傷病手当金・出産手当金」など、万が一の際の保障を労使折半(半額負担)で得られます。この手厚いセーフティネットが従業員のエンゲージメント(帰属意識)を高め、長期雇用につながるため、採用・教育コストの削減という中長期的なリターンを生み出します。
- 国の助成金を活用した移行期のコスト緩和:週の労働時間を延ばして社会保険を適用させる場合、国の助成金(例:「キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)」など)を活用することが可能です。これにより、導入初期の企業負担を一定期間補填しながら、体制の移行をスムーズに進めることができます。
法改正に伴う企業負担(法定福利費)のシミュレーション
実際にアルバイトを新たに社会保険に加入させた場合、会社が負担する「健康保険料・厚生年金保険料」が毎月どれくらい発生するのか、具体的な試算を把握しておくことが経営判断において不可欠です。
契約上の月収に応じた会社負担額の合計をシミュレーションできる表を参考にしてみてください。
算出基準:
- 2026年度の協会けんぽ全国平均健康保険料率:9.90%(40歳未満、介護保険非該当を想定)
- 厚生年金保険料率:18.3%
- 保険料は「労使折半」とし、企業が本人負担分と同額を負担します。
- 雇用保険料、子ども・子育て支援金、労災保険料等は別途発生します。
- 実務上、40歳~64歳の従業員については、全国一律の介護保険料率(2026年度は1.62%に引き上げ)も労使折半(企業負担0.81%)で上乗せされる点に留意が必要です。
| 契約上の月収 |
標準報酬月額 |
会社負担: |
会社負担: |
会社負担額の合計 |
|
88,000円 |
88,000円 |
約4,356円 |
8,052円 |
約12,408円 |
| 100,000円 |
98,000円 |
約4,851円 |
8,967円 |
約13,818円 |
| 120,000円 |
118,000円 |
約5,841円 |
10,797円 |
約16,638円 |
例えば、アルバイトの契約時間を延ばし、月収が88,000円に達して加入対象となった場合、企業は追加で毎月約12,400円(年間約15万円)の法定福利費を1人あたりに負担することになります。このコストを単なる「負担」ではなく「人材の安定確保のための必要投資」として、経営計画やサービス価格の設定などに早期に織り込んでおくことが肝要です。
また、企業の負担増に対応するため、経過的ではありますが政府からの支援があるほか、助成金なども拡充されているので、要件があてはまるか確認するとよいでしょう。
学生・掛け持ちなど実務で判断に迷うケース
アルバイトの働き方は多様であるため、人事労務担当者が判断に迷いやすい「学生」「掛け持ち(Wワーク)」のケースと、「未加入を巡るトラブル」について解説します。
1.学生アルバイトの適用判定と例外
結論:学生であっても、4分の3基準を満たして働く場合は、例外なく社会保険への加入義務(企業側の加入手続き義務)が生じます。
原則として、大学や高校などの学生は、短時間労働者の5条件(週20時間以上、月額8.8万円以上など)を満たしていても適用除外(加入不要)となります。しかし、以下の場合は例外として加入が必要です。
- 4分の3基準を満たす勤務形態:週30時間以上かつ月15日以上(フルタイムの4分の3以上)働く場合は、学生であっても一般の労働者と同様にみなされ、加入が義務となります。
- 夜間・通信制・定時制などの学生:夜間大学(二部)、通信制、定時制、あるいは「休学中」の学生は、一般の労働者と同様に就労が可能な実態にある(学生の適用除外規定の対象外となる)ため、短時間労働者の5条件(週20時間以上、月額8.8万円以上など)を満たした時点で加入手続きが必要となります。
2.掛け持ち(Wワーク)従業員の判定ルール
結論:掛け持ちの場合、労働時間や賃金は他社分と合算せず、自社での労働条件のみで個別に加入条件を判定します。
例えば、自社と他社でそれぞれ以下のように働いている従業員がいたとします。
- 自社:週15時間勤務、月額賃金65,000円
- 他社:週12時間勤務、月額賃金50,000円
2社を合算すると「週27時間、月額115,000円」となりますが、自社単体では「週20時間以上」にも「4分の3基準」にも達していないため、自社で社会保険に加入させる必要はありません。
【コラム】自社・他社双方で加入条件を満たした場合は?
もし、自社で週30時間(4分の3基準)、他社でも週20時間以上かつ特定条件を満たすなど、「同時に2つの会社で加入要件を満たした」場合、従業員はどちらか一方の健康保険組合(または協会けんぽ)を選択することになります。
この場合、従業員自身が「二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出し、双方の会社の給料を合算した額を基に保険料が計算されます。保険料はそれぞれの会社の給与比率に応じて按分(比例配分)され、自社負担分の保険料が年金事務所から請求されます。企業としては他社での給与情報を把握し、給与天引きの額を調整する実務が発生します。
企業側の実務対応と未加入リスク
社会保険を適正に管理・運用することは、従業員との信頼関係を築き、将来的な財務リスクを回避するために不可欠です。企業が取るべき具体的な実務フローを整理します。
1.加入手続きの流れと届出期限
新たに社会保険の加入条件に該当するアルバイトが発生した場合、企業は定められた期限までに以下の手続きを進めなければなりません。
- 「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の作成該当者のマイナンバー(または基礎年金番号)、雇用契約上の適用開始年月日等を記載した届出書を作成します。
- 5日以内の提出義務加入義務が発生した日(雇用開始日、またはシフト変更等で条件を満たした日)から「5日以内」に、管轄の年金事務所へ届け出なければなりません。
- 従業員への丁寧な説明(実務上の最重要ポイント)特にこれまで扶養内で働いていたスタッフに対し、社会保険に加入するメリット(傷病手当金などの医療保障の充実、将来受け取る年金の増額など)を丁寧に説明します。「手取りが減る=損」という思い込みを解消し、労使双方が納得した上で加入手続きを進めることが、予期せぬ離職や不満を防ぐための鍵となります。
【コラム】電子申請(e-Gov、労務ソフト)の導入推奨
届出期限が5日以内と非常にタイトなため、書類作成から送付までのタイムラグをなくすために、国が推進する「e-Gov」や各種クラウド型労務管理ソフトを用いた電子申請体制を構築しておくとよいでしょう。
2.未加入に対する従業員からの指摘と行政指導プロセス
加入義務の要件を満たしているにもかかわらず手続きを行わないことは、企業側の明確な「法令違反」です。
「社会保険料の負担を抑えたい」「アルバイト本人が手取りを減らしたくないと拒否した」といった理由であっても、法律上の加入基準を満たした従業員を未加入にしておくことは許されません。
従業員が「加入条件を満たしているはずなのに手続きをしてくれない」と勤務先に不信感を抱き、年金事務所に直接相談(情報提供)した場合、以下のプロセスが進行します。
- 年金事務所からの問い合わせ・指導年金事務所から企業宛てに、労働基準監督署のデータ等との照合を基に、加入勧奨の文書が届くか、電話による聞き取りが行われます。
- 立入検査の実施指導に従わない場合、または悪質と判断された場合、年金事務所による「立入検査」が実施されます。過去の賃金台帳やタイムカード、出勤簿、労働契約書などの提出を求められ、実態調査が行われます。
- 職権による強制加入手続き加入義務があると判定されれば、年金事務所の職権によって強制的に社会保険へ加入(資格取得)させられます。この際、最大2年間に遡って会社負担分・本人負担分を含めた保険料が、企業側に一括で請求されるため、キャッシュフロー上甚大なダメージを負うことになります。
3.未加入放置による甚大な企業リスク
「アルバイトだから手続きを忘れていた」「加入を嫌がられたから見送った」という言い訳は通用しません。未加入の放置は、経営に致命的なリスクを伴います。
- 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金:届出を怠り、または虚偽の届出をした場合、健康保険法第208条および厚生年金保険法第102条に基づき、事業主に対して刑事罰(懲役または罰金)が科される可能性があります。
- 最大2年分の遡及保険料の一括請求:年金事務所の指導や立入検査等で未加入が指摘された場合、最大2年間遡って社会保険料を納める(遡及加入)よう命じられます。2年分の「健康保険料・厚生年金保険料」は、通常は労使折半ですが、「過去の退職者」や「既に支払ってしまった給与から遡って回収することが実務上極めて困難な在籍者」の本人負担分も含めて、企業が全額を立て替え払い(実質的な全額自己負担)せざるを得ないケースがほとんどです。アルバイト1人あたり年間数十万円の負担が、一挙に数名~数十名分、2年分請求されれば、数百万円規模の不測の支出となり、黒字倒産のリスクすら生じます。
- 採用・定着への致命的な影響(ブランド失墜):「社会保険に適切に加入させない企業」というレッテルは、ハローワークや求人メディアへの求人掲載制限だけでなく、SNSや口コミサイト等を通じた悪評の拡散に直結します。深刻な人手不足が続く現在の採用市場において、法令遵守(コンプライアンス)に不安のある企業は求職者からの信頼を失い、選ばれなくなるリスクが極めて高くなります。
【北海道で採用活動を行う企業様へ】適切な条件提示と効率的な採用を!
2026年10月の「106万円の壁(賃金要件)撤廃」および、今後の「企業規模要件の段階的引き下げ」により、アルバイトの採用枠の設計やシフト管理はさらに複雑化します。
「週20時間未満に抑えて複数人を採用するべきか」「いっそ社会保険に加入してもらい、フルタイムに近い長時間勤務を促すべきか」といった、企業のビジネスモデルに合わせた採用戦略のアップデートが不可欠です。
特に北海道内でのアルバイト・パート採用においては、地域ごとの最低賃金や求職者の志向性(扶養内を強く望む層が多いかなど)に合わせた求人原稿の作成や、ターゲットに響く雇用条件の提示が採否を大きく左右します。
50年以上の歴史を誇り、札幌近郊のアルバイト・パート採用に定評のある『アルキタ』や、地域密着型の求人メディア『シゴトガイド』では、法改正に伴う最新の求人表記ルールの適応はもちろん、日々変化する労働市場にマッチした効率的な採用プロセスを強力にサポートいたします。
まとめ
アルバイト・パートタイマーの社会保険適用は、単なる「法定福利費(企業コスト)」の増減としてだけ捉えるべきではありません。
2026年10月には「週20時間以上」働いていれば原則として自動的に社会保険の対象(106万円の壁撤廃)となり、その後も企業の規模にかかわらず段階的に一律適用が進んでいきます。法改正のスケジュールを正確に把握し、前もって人件費計画を立て、適正な労務管理を行うことは、企業の持続可能な成長とコンプライアンス遵守のための大前提です。
- 加入要件の二重確認:自社の従業員が「4分の3基準」または「短時間労働者の5条件」のどちらかに達していないかを毎月点検する。
- 2026年10月改正への備え:賃金要件の撤廃を見越し、週20時間以上のスタッフ全員を社会保険に加入させるための予算化・シフト設計を行う。
- 従業員との早期コミュニケーション:対象となる従業員に対し、手取りの減少と引き換えに得られる厚い医療・年金保障メリット(労使折半)を事前に説明し、合意を形成する。
もし、「自社のこのスタッフは来年から加入対象になるのか」「雇用契約書の記載内容はどう変更すべきか」といった、法律上の判断や雇用契約の実務対応について具体的な疑問がある場合は、お近くの年金事務所や社会保険労務士(社労士)などの労務の専門家へ相談するとよいでしょう。
また、法改正に伴う「求人表記の変更」や、新しい基準に合わせた「最適な採用戦略・求人設計」についてお悩みの経営者様・人事担当者様は、ぜひお気軽に当社の採用支援担当までお問い合わせください。
Writer
ヒトキタ編集部 小林陽可
Profile
求人営業部での法人営業を経験した後、WEB記事のライティングや自治体への移住施策企画のディレクション等に従事。現在は広報業務・営業支援を行う。